35歳で「初めて就職する」ことの困難さを、改めて考えてみた:サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(3/3 ページ)
先日、ある女性の就職相談に乗ったというサカタさん。芸術系の大学を卒業し、その道に進んだ彼女は現在35歳。別の道を歩もうと正社員としての採用を目指し就職活動を開始したものの、世間の風は冷たかったといいます。
65歳定年制、現実味を持ってとらえられない
企業がある程度の年齢に達しているけれども、未就業や、正社員としての経歴がない人を採用することに躊躇する理由は他にもたくさんあります。例えば年上の部下を抱える上司のやりにくさを理由に掲げる人も多いでしょうし、どうせなにもできないなら、若い人を採用して企業内の人口ピラミッドを崩したくないとも考えるでしょう。もしくは、この程度の年齢の人にはこのあたりの給料をという風な、違和感のない給与テーブルを作っておきたいことを理由に挙げる人もいるかもしれません。
とにかく「卒業したら就職して、ビジネスパーソンとしての経験を積む、という道を歩んでいないと、後でとてもしんどい思いをする」という事実があるのです。たとえある分野に一生懸命打ち込んだとしても、です。リスタートがしにくいといっても良いかもしれません。
この話の流れで、周囲にある提案をしてみました。35歳の未経験者が定年の65歳まで働くとしたら残り30年間あります。大学を卒業して35歳まで働いている人は、13年目に入るところだとしたら、定年までの時間の方が長いし、十分に戦力化することができるはずだと。他の分野で努力した経験があれば、一人前になるまでの時間はもっと短くて済むかもしれない。としたら、その13年の差は最終的には埋められるかもしれないと。しかし、多くの人は「うーん、どうだろう。頭では理解できるのですが、なにか気持ち悪い」という意見が大半でした。同時に「そもそも今の会社で定年まで働く、というイメージが自分自身にもないので、35歳の人にも残り30年あるといわれても、ピンと来ないのです」という話もありました。
今回のコラムは別にこれだという正解がある話ではありません。ただ、別のことに打ち込んでいた人が新しい道を歩みたいと思ったときに、道がどこにもありませんでしたというのは、少し残念であると同時に、もっと若い人たち、例えば子供たちに「やりたいことに一生懸命になりなさい」と、励ましてあげるのが世の中でもあるなと思った次第です。大きな意味での転職市場が、リスタートを切りたい、と思ったらいつでもそれが可能になっている、というくらい柔軟な構造になっていると、少子高齢化社会の日本では、もっと救われる人が増えるかもしれない、とも考えています。そして同時に「気持ち悪い原因は他にある」ことも承知していますが、それはまた、稿を改めて。
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