シンガポールの首相が中国を小馬鹿にした夜:伊吹太歩の世界の歩き方(4/4 ページ)
日本人が未来都市のような観光地というイメージを抱くシンガポール。同国のリー首相が訪米で語った「中国批判」の裏には、シンガポールという国の真実が隠されていた。
シンガポールの華僑は中国人を下に見ている
ただ最近では、そんな空気を良しとしない若者を中心に野党に投票する雰囲気が高まっている。その結果が2011年の野党敗北だった。
そうなれば、与党の意識は国民寄りになる。シンガポールは国民の7割以上が中華系だ。にもかかわらず、実は多く中華系が、中国人を好きではない。自分たちは本土の中国人と一緒にされたくないという意識が強いのだ。
現に、若いシンガポール人のほとんどが中国語を話せないばかりか、学ぼうともしない。シンガポール人とゆっくり話をしてみると感じるのが、彼らが中国人を「下に見ている」ということだ。
さらに政府にもそんな意識があることは確かだ。シンガポールは建国以来、脱・中国人を目指してきた感がある。特に、政府が国民から排除しようとしてきたのは中国人の「無作法さ」だ。例えばシンガポールでは、唾(痰)を吐いてはいけない。ゴミをポイ捨てしてはいけない。男であっても上半身裸で仕事などをしてはいけない。こうした禁止事項は、中国人がよくやる中国人らしい行為だ。
リーの夕食会での発言の奥底には、国民の意識に根付いている「本土の中国人とは一緒にされたくない」という思いに訴えかけようとする意識があったのではなかろうか。劣勢の与党は国民に「あなたたちと同じ感情を共有していますよ」と言わんばかりだ。
リーの発言から、シンガポールのこうした現実が垣間見える。油断して、うっかり夕食会に参加した300人ほどのビジネスマンらの前で、あんな冗談を話すほど、リーも間抜けではない。今のところリーは夕食会での発言について、何も語っていない。そして当のシンガポール人からも、リーの発言に対する「苦言」は聞こえてこない。もっとも、管理されているために、反政府の発言をする場所もほとんどないのだが。
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