なぜ統一球が飛び出したのか? 問われるNPBの隠ぺい体質:臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(3/3 ページ)
組織ぐるみのウソが発覚し、日本球界が大騒ぎだ。日本野球機構(NPB)が統一球の仕様を変更しただけでなく、「変えていない」と言い張っていたことが発覚したのだ。
コッソリ変えたのはNPBのメンツを守るため
NPBの内部事情を良く知る球界関係者の分析は、こうだ。
「『飛ばない統一球』の導入は、コミッショナーの加藤さんの肝いりで始まったもの。それが選手やファンから多くの反発を招き、導入からわずか2年でメスが入れられたとなれば、加藤さんのメンツは丸潰れになる。しかしこのまま『飛ばない統一球』を使い続ければ、プロ野球のファン離れが加速するのは必至。どうやら、それでやむにやまれず『飛ぶ統一球』に変更したようです。
コッソリと変えたのは、NPBの旗振り役である加藤さんの立場を守るためでしょう。だが、予想以上に『変更したのではないか』という声が多かったため『変更していない』というウソを貫き通せなくなってしまった。NPB側は『昨シーズンの抜き打ち検査で反発係数が下限を下回っていたから、範囲内に修正させた』とまるでミズノに全責任があるような口ぶりで釈明していますが、それも怪しい。とにかく今回の一件はミズノではなく、NPBのトップ、加藤さんの責任でしょう」
その言葉通り、加藤コミッショナーの責任はとてつもなく重い。「『飛ぶ』にしろ『飛ばない』にしろ、統一球そのものの導入自体が失敗だった」と指摘する球界関係者も多いからだ。
加藤コミッショナーは、旗振り役として責任をとるべきだ
統一球の導入によって、国際試合で参加選手たちはボールの扱いに戸惑わないようになったはずだった。だが、2013年3月の第3回ワールド・ベースボール・クラシックでは相変わらず日本の投手陣がWBC使用球の対応に苦しんだ。
WBC使用球とMLB公認球は、ともにローリングス製の牛革で規格がほぼ同じ。ミズノが作った日本の統一球も確かに牛革だが、WBC使用球は縫い目が高く、滑りやすかったことでサムライジャパンの投手陣の多くは肩やヒジに負担がかかり、故障者まで出てしまった。
「国際試合で参加選手たちが戸惑うこともほとんどない」と力説していた加藤コミッショナーの言葉は一体何だったのか。旗振り役として責任を取らなければならないのは当たり前で、これは「最低限」の処遇であろう。
だが、6月12日にNPB事務局で行なわれた会見で、加藤コミッショナーは「(騒動は)批判に値すると思うが、これは隠ぺいや不祥事ではない。私は昨日(11日)まで、この(『飛ぶ統一球』になったことの)事実を知らなかった。ただ私が知っていれば公表していた。それができなかったのは最高責任者である私の責任で、これからはガバナンス(統治)の強化につとめる」とコメント。
辻褄の合わない言い逃れの言葉に終始するとともに自らの職務をまっとうすることも強調し、そのすべての責任を統一球の仕様変更を指示したとされる下田事務局長に事実上押し付ける形となった。組織の長としては、信じられないような幕の引き方である。
ビジネスパーソンを含め多くのファンに夢を与え続けている日本プロ野球界を、これ以上失墜させてはいけない。NPBは矛盾点ばかりでメリットを生み出していない統一球ともっと向き合い、誰もが納得する答えを出すべきである。そうでなければ未来はない。
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