番組を動画サイトにアップ、どう思う? テレビが面白い理由:田原総一朗VS. 水道橋博士のテレビと著作権(後編)(6/7 ページ)
ソーシャルメディアが普及したことでネット上にテレビ番組についての感想や批評を記す人たちが出てきた。テレビ番組の引用はどうあるべきなのか。田原総一朗さんと水道橋博士が語り合った。
テレビ番組の引用と、公的コンテンツの扱い
一般社団法人インターネットユーザー協会 代表理事 小寺信良
個人が権利者の許諾なしに、テレビ番組をネットにアップロードして利用することは、著作権法により多面的に禁じられている。
まず番組を“不特定または多数の人がアクセスできる環境”におかれている何らかのサーバにアップロードすることは、複製権及び送信可能化権の侵害となる。そこから、誰かのリクエストに応じて実際にストリーミングやダウンロードを提供すると、自動公衆送信権の侵害となる。送信可能化権も、自動公衆送信権も、あまり聞きなれないかもしれないが、「公衆送信権」という、不特定または多数の人にコンテンツを提供することをコントロールできる権利の一部として、著作権法に定められているものだ。
またこれらの違法にアップロードされた番組を、違法にアップロードされたファイルと知りながらダウンロードする事は、2010年の著作権法改正によって違法化され、損害賠償などの対象となった(ストリーミングによる視聴は違法化されていない)。さらに2012年の改正では、商業コンテンツを違法にアップロードしたものをダウンロードする行為に対して、刑事罰が付けられることとなった。
この2012年の改正時には、アクセスコントロールを回避してコピーすることも、同時に違法化された。アクセスコントロールとは、コンテンツの再生を制限することで著作物を保護する仕組みで、これまでは複製を制限するコピーコントロールとは区別されてきた。従来からコピープロテクトがかかったものを、技術的手段を用いて回避しコピーすることは違法だったが、この改正により、アクセスコントロールもコピーコントロールと同様の扱いとなった。
例えば日本のテレビ放送は、アクセスコントロールのために暗号化されており、それを解くための“解読鍵”は、テレビなどに挿入するB−CASカードに記録されている。正規の“解読鍵”が使える機器やソフトウェアは、暗号化を解いた状態のコンテンツを取り出せないように、機能が制限されている。
テレビ番組をネットに上げて、それを誰かが視聴するためには、暗号化を解いた状態でサーバに置いておく必要がある。しかし2012年の改正により、この行為が違法となったわけである。
アップロード、ダウンロード、そしてアクセスコントロールを回避した上での複製の3つの規制により、テレビ番組をネットに上げて誰かの役に立てることは、三重に制限されている事になる。
関連記事
- ネットを使ってテレビを見るのは、そんなにダメなの?
動画サイトにアップロードされているテレビ番組は、かなりの数にのぼる。しかしそれらの番組のほとんどは、テレビ局によって消されてしまう。ネット上でテレビ番組を見ることができるようになると、どのようなメリットがあるのか。田原総一朗氏と水道橋博士が語り合った。 - 朝日新聞が、世間の感覚とズレにズレている理由
気鋭のジャーナリスト、上杉隆氏、相場英雄氏、窪田順生氏の3人が、Business Media 誠に登場。「政治評論家に多額の資金が渡った」と指摘されている官房機密費問題や、メディアが抱える問題点などについて語り合った。 - NHKが、火災ホテルを「ラブホテル」と報じない理由
言葉を生業にしているマスコミだが、会社によってビミョーに違いがあることをご存じだろうか。その「裏」には、「華道」や「茶道」と同じく「報道」ならではの作法があるという。 - 何が問題なのか? メディアにころがる常識
メディアが構造的な問題に苦しんでいる――。購読部数の減少、広告収入の低下などさまざまな課題が押し寄せているが、解決の糸口が見えてこない。こうした問題について、ジャーナリストの津田大介氏と社会学者の鈴木謙介氏が語り合った。 - なぜこの国に、“モミ消しのプロ”は存在しないのか
ジャーナリスト・上杉隆氏をホストとする対談連載1回目。事件などを追い続けているノンフィクションライター・窪田順生氏を招き、メディアの現状や課題などを語り合った。 - なぜマスコミはインチキをしても「ごめんなさい」と言わないのか
普通の企業ならば謝罪会見モノの不祥事が発覚しても、しれっとした顔でやり過ごしている業界がある。言わずと知れた、マスコミだ。なぜ彼らは意地でも頭を下げないのか。そこには一般人にははかりしれぬ“美学”があったのだ。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.