米ネット監視システム「PRISM」を暴露した人物、実は中国のスパイかも?:伊吹太歩の世界の歩き方(2/4 ページ)
突然、暴露された米政府のネット監視システム「PRISM」の存在。その対象には日本人も含まれている。それにしてもリークした元CIA職員は英雄なのだろうか?
米国による「プライバシー強盗」に他ならない
リークされた情報には、パワーポイントのファイルがあった。そこにはプリズムの仕組みが説明されている。プリズムの運用費は年間2000万ドル(約20億円)。米政府は、Google、Yahoo!、Facebook、アップル、マイクロソフト、YouTube、Skypeなどの大手ネット企業でやり取りされる電子メールと個人情報、写真を手に入れられるのみならず、「電子メール、チャット、ビデオ、音声、写真、保存データ、送受信ファイル、ビデオ会議、標的の活動やログイン状況など、ソーシャルネットワーク」の情報が得られると記されている。
さらに「特別リクエスト」というのもあり、リクエストすればさらなる情報も入手可能だ(ちなみに上記の企業からの協力でデータベースが作られているのだが、最後まで政府に抵抗したのはYahoo!とTwitterで、Twitterは最終的に情報を提供していない)。
このニュースは言うまでもなく、世界中で大々的に報じられた。もちろん日本でも取り上げられているが、あまりことの重大性が伝わっていない気がする。NSAがやっているのは、日本でも利用者の多いGmailやYahoo!メール、Facebookなどの「プライバシー強盗」に他ならないのだ(米政府は、通信記録などの「メタデータ」を監視していただけだと主張しているが)。
しかも米政府は、胸を張って言い訳する。「この監視は米国民を対象にしていない」と。つまり「外国人」を監視対象にしているというわけだ。となれば日本人も監視対象であることを忘れてはいけない。要するに、上記の企業のサービスを介する情報は、NSAに完全に筒抜け。プリズムでは、単語を使ったメール内容検索も可能だという。
さらにいうと、これは単なるプライバシー侵害に留まらない。世界規模で通話記録やメールの情報を集めれば、米国の外交も飛躍的に有利になる。例えばTPP(環太平洋連携協定)交渉に関する日本の動きも、米政府がその気になれば、さまざまな情報を抜き取ることが可能になる。
政府関係者だけではなく、機密に近い政府関係の情報は協力関係にある民間人や企業にも渡る。そんな情報も、PCの前に座って、パチパチとタイプして検索すればいいだけだ。NSAには、米クレジットカード会社の情報にアクセスできるシステムもあると指摘されている。もうみんな丸裸だ。しかも米国人以外なら問題ないでしょう、という厚顔ぶりだ。
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