中国経済にちらつく第2の“リーマンショック”の影:藤田正美の時事日想(1/2 ページ)
中国のシャドーバンキングによる「信用バブル」が叫ばれ、銀行間の短期金利が乱高下している。もし中国経済がこの問題で一時的であれ停滞することになると、アベノミクス効果はたちまち打ちのめされるだろう。
著者プロフィール:藤田正美
「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”」
中国経済の変調ぶりが気になる。2013年5月23日に製造業のPMI(購買担当者指数)が予想を下回る低さだったために、日本の株価が大きく下落したのは記憶に新しいところだ。それだけではない。最近は、中国のシャドーバンキングによる「信用バブル」が叫ばれ、銀行間の短期金利が乱高下している。一時は13%を超え、一部の銀行は資金難に直面した。
そんな中で、中国4大銀行(中国銀行、中国工商銀行、中国農業銀行、中国建設銀行)のひとつのATMが現金の支払いを突然停止したこともあったと報道されている(ソフトウエアの更新によるもので、現金が不足したためではないとの説明だった)。
これまで中国の信用はGDP(国内総生産)をはるかに上回るペースで伸びてきた。その資金を出しているのが、通常の銀行貸し付けではなく、一般個人や企業など。問題は、資金を集めるために、通常の銀行金利よりも高い利息を約束していることだ。6月26日付けフィナンシャルタイムズ紙によれば、6月25日時点で303種のそうした「理財商品」が発売されており、その3割以上が5%以上の利回りをうたっている(1年物定期は約3%)(参照リンク)。
こうしたカネは、地方政府への融資に回っているとされるが、「債務」としてはカウントされていないのだという。格付け会社のフィッチはこの問題に早くから警告を発してきた。中国政府の債務残高はGDPの20%強ぐらいだが、地方政府の隠れ債務はそれを上回るともされている。
地方政府はこうした資金を住宅やインフラ整備に向けている。つまり返済は長期に及び、それほど高い利回りが期待できるわけではない。それなのに資金そのものは短期の資金がほとんどだ。中国経済全体が成長しているときには、借り換えなどの手段でつなぐことは可能かもしれないが、経済成長が減速してくると、この歯車が回らなくなる恐れもある。
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