参院選後を読む、安倍首相は救国の指導者となるか:藤田正美の時事日想(3/4 ページ)
7月の参議院選挙は自公圧勝に終わるだろう。同時に民主党は、国民から野党としてさえも信認されないだろう。選挙後の日本はどこへ向かうのか。
この社会保障関連費用は総額で年間100兆円を超えているが、そのうち国税や地方税から支出される分はだいたい40兆円ぐらいだ(国の支出分だけだと28兆円程度)。1000兆円にも及ぶ国の借金を減らそうと思えば、この最大の支出項目である社会保障関連費に手をつけなければならない。消費税引き上げを決めた民主党政権は、社会保障を維持するために消費税引き上げをお願いするとよく言っていたが、実は現在の社会保障を維持したままというのは不可能だと思う。
人口の塊である団塊の世代は、いま前期高齢者になった(参考記事)。この人たちが後期高齢者に入り始めるのが2022年。そこから医療や介護の費用が激増することが予想されている。そこまでに制度を変える、つまり社会保障の給付の制限をしなければ、社会保障の重みで押しつぶされてしまうかもしれない。
「無能」な政治家たち
日本の政治はこれまでこの状況に対してあまりにも「無能」だった。例えば70歳から74歳の老人医療費の自己負担分は本来2割であったのに、それを1割にしてわざわざ赤字を増やしてきたのは昔の自公政権である。民主党も2割に戻すとは言ったが、とうとう実現しなかった。本来の2割に戻すことで節約できる分は2000億円程度だが、こういうことを国民に向かって率直に話し、理解を得るのが政治家の仕事なのである。衆参ねじれがなくなったとき、この政治の本来の課題が自公政権に肩にずっしりとかかってくる。
忘れてはならないのは、自公政権が痛みを伴う政策を先延ばしする余裕はないということだ。日銀がいくら金融を緩和しても、政府の財政赤字をファイナンスしているだけだと判断されれば、麻生財務大臣がよく言うように「日本の国債の信認が薄れてしまう」のである。そうなったら、国債は市場で売り叩かれ、結果的に長期金利が上がることになるだろう。
関連記事
- ネット選挙解禁、ネットユーザーの化学反応が気になる
最近の政治をふり返ると、政党のガバナンスが効いていない。それは権力基盤を党内ではなく、支持率に求めているからだ。ネット選挙が解禁されると、どんな化学反応が起きるのだろうか。 - 安倍首相は痛みを伴う改革を断行できるのか
英エコノミスト誌の最新号表紙は、スーパーマンに模した安倍首相が空を飛んでいるものだ。官僚の「天敵」たる規制緩和を実行できるのか。 - 外交力が第2次安倍内閣の行方を左右する
安倍首相には長期政権になってもらわなければならない。そのためには「憲法改正」や「歴史問題」を封印しつつ、日本の立場を経済的に、そして外交的に強めることに専念すべきだ。 - 団塊の世代に医療費が注ぎ込まれる時代
国民医療費38兆円弱の約45%は70歳以上の人が占め、そのうちのほぼ8割は75歳以上の人が占めている。状況は逼迫(ひっぱく)しているのに、政治家は法律で決まっていることすら実行できない。 - 世界は日本の財政再建を待ち焦がれている
安倍首相が絶好調だ。日銀の黒田新総裁は首相の期待に応えた。次に求められるのは財政再建のロードマップだ。そしてそれがどの程度の安心感を世界にもたらすのか。 - 藤田正美の時事日想バックナンバー
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.