ネット選挙解禁、ネットユーザーの化学反応が気になる:藤田正美の時事日想(1/2 ページ)
最近の政治をふり返ると、政党のガバナンスが効いていない。それは権力基盤を党内ではなく、支持率に求めているからだ。ネット選挙が解禁されると、どんな化学反応が起きるのだろうか。
著者プロフィール:藤田正美
「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”」
最近の政治、とりわけ民主党政権の3年余を見ていて、政党のガバナンスが効かなくなっていると思う。民主党政権の混乱ぶりはひどかった。小沢一郎元代表の強制起訴をどう受け止めるかさえはっきりしなかった。代表選で小沢氏に勝った菅氏は「少し大人しくしたほうがいい」などと語った。結局、民主党は分裂に追い込まれ、先の衆院選では惨敗した。
ガバナンスが効かなくなったのは小泉純一郎首相の時代からかもしれない。もともと党内基盤が弱い小泉氏は、首相としての権力基盤を党内ではなく党外、すなわち支持率に求めた。郵政民営化をめぐる2005年の総選挙がその典型である。郵政民営化法案が参議院で否決されると、「国民の意見を聞きたい」と言って衆議院を解散してしまった。あまつさえ、党内の民営化反対論者に「刺客」を放って、圧勝したのである。
それでもシングルイシューで戦えるときはよかったのだろう。2012年12月の衆院選。政権交代選挙という意味では、2009年の政権交代選挙と並ぶ重みがあったはずだ。民主党惨敗ということは容易に予想できた(2009年のときは自民党惨敗と容易に予想できた)とはいえ、3年余に及ぶ民主党政権をどう評価するかという重要な選挙だった。しかし投票率は6割に満たず、前回よりも10ポイント近く低下した。有権者は4900万人ほどだから490万人もの人々が投票所に足を運ばなかったということになる。
自民党が形の上では圧勝したが、中身は伴っていなかった。ある自民党議員は、自分の当選が決まった直後、こう語った。「今回の得票は逆風が吹き荒れた2009年のときの得票に及ばなかった。相手(民主党)がこけただけ。民主党から流れた票は、維新とかみんなに分散したので助かった」
投票率が下がったのにはいくつか理由があると思う。ひとつ大きな問題は、原発のような複雑で解のない問題があったからかもしれない。自民党は再稼働を打ち出していたが、本来、東電福島第一原発の事故の遠因は、かつての自民党政権の安全対策にぬかりがあったからだ。民主党政権ではこの日本の閉塞状況に手が打てないことははっきりしたとはいえ、自民党に両手を挙げて賛成することはできない。
問題が複雑化しているときに、ネット選挙運動の解禁は選挙あるいは政治運動にどのような影響を与えるのだろうか。政党や候補者がどのようなネット活動を展開するかよりも、その活動にネット参加者がどのように反応して化学反応が繰り返されていくのかのほうに興味がある。
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