ヘンテコ英語で逆効果!? 企業スローガンはリスクがいっぱい:ビジネス英語の歩き方(2/3 ページ)
その企業の事業内容を分かりやすく、そして簡潔に表現するスローガン。日本の多くの企業では英語のスローガンが使われていますが、外国人の視点から読んでみるとどういう印象を抱くのでしょうか?
疑問符がつくスローガンも……
さて企業スローガンに戻りますが、日本の有名企業はそれなりにいいものを作っています。しかし、中には首をかしげたくなるものもあります。例えばNECの「Empowered by Innovation」。
Empowerもinnovationも、それぞれ世界的に流行っている言葉で申し分ありません。empowerというのは、力を与えるという基本的な意味をもつ言葉です。しかし、empoweredと受け身になっているところがよく分かりません。
誰が、あるいは何がエンパワーされたのか? NECなのか、あるいはNECのユーザーなのか? そこのところがよく分かりません。従って、メーセージがほとんど何も伝わってきません。なお、NECでは「『革新をあなたの力に。』という意味」だと説明しています。だいぶ無理がありますが。
企業スローガンもなかなか難しいのです。英語で書かれた何百もの企業スローガンを見比べてみると、受け身の表現を使っている企業はまずありません。受け身ではその企業が何を言いたいのか、ほとんど表現できないからです。
東芝の「TOSHIBA Leading innovation」にも、曖昧さが残ります。イノベーションをリードするのか、先頭を走るイノベーションを(すでに)持っていると言いたいのか、はっきりしません。
ソニーが2004年ごろから使っていた「like.no.other」。言葉としては、かつて新商品を続々と世界に紹介したソニーらしいものですが、単語の間にピリオドを入れているのはいただけません(2009年から使っている「make.believe」にもピリオドが入っています)。このピリオドの意味は何でしょうか? かつての「It's a Sony.」の自信に満ちた響きが懐かしいですね。
日本たばこ産業(JT)が2009年まで使っていた「The Delight Factory」は秀逸です。タバコだけでなく、食料品、医薬などに手を広げていて、ややもすると企業イメージが拡散しがちな業態をかかえ、喜びを作り出す会社というくくり方をして、マーケティングのテクニシャンぶりを見せています。Theを頭につけているのも正解です。
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