国家の市場介入は国民を豊かにするのか?:藤田正美の時事日想(1/3 ページ)
BRICsの中でインドが行き詰まりつつある。2025年には中国を逆転して世界最大の人口を抱えることになる「世界最大の民主主義国」はどこへ向かうべきなのか。
著者プロフィール:藤田正美
「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”」
新興国が2008年のリーマンショック以降に見せたような力強さを失っている。これはほぼ共通認識だろう。中国がこのまま輝きを失うのか、それとも13億の民を背景に民需の力で成長力を取り戻すのか。そこについてはいまだに議論が分かれている。しかし最近、新興国の中でもすっかり期待を裏切った格好になっているのがインドだ。
インドと中国。象と龍に例えられ、ともに巨大な人口を擁する。約12億人と約13億5000万人。これが2025年には約14億6000万人と13億9000万人になると見込まれている。つまりインドが中国を逆転して世界最大の人口を抱える国となる。
他にも両者には似通ったところがある。インドも中国も普通の資本主義とはちょっと違う「国家資本主義」の国であるということだ。普通の資本主義とどこが違うか。資源(ヒト・モノ・カネ)の配分を普通は「市場」が行うのに対し、国家資本主義では国家がその資本配分を行う。
ただインドと中国で大きく違うのは政治体制だ。中国は共産党の一党独裁であるのに対し、インドは普通選挙が行われる民主主義国家である。米国のジョージ・ブッシュ大統領は、米印原子力協定を結ぶとき「世界最大の民主主義国」と持ち上げた(もっとも、世界で最も混乱に満ちた民主主義国という言い方もできなくはない)。
2008年に初めて開かれたG20の首脳会議でもインドのマンモハン・シン首相の存在感は大きかった(シン首相は2004年5月から首相を務めているからもう9年を越えている)。2008年9月は世界がリーマンショックに揺れた年だが、シン首相は成長率8〜9%がインドの「巡航速度」であると豪語した。
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