国家の市場介入は国民を豊かにするのか?:藤田正美の時事日想(2/3 ページ)
BRICsの中でインドが行き詰まりつつある。2025年には中国を逆転して世界最大の人口を抱えることになる「世界最大の民主主義国」はどこへ向かうべきなのか。
しかしインドの通貨ルピーはこのところ下げ続けている(公平を期すためにいえば、インドだけが悪いわけではない。ブラジルやインドネシアも通貨安、株安に直撃されている。米国のFRBが超金融緩和策を縮小することを示唆したために新興国から資金が引き揚げられているためだ)。それに対してインド政府は資本の移動を規制してルピーの下落を止めようとした。自国民の資本逃避を防ぐためである。しかしその努力は今のところまったく功を奏していない。
中国もそうだが、インドもやはり外国資本に頼るところが大きい。しかし世界銀行が発表したビジネスをしやすい国のランキングでは、中国が91位、ロシアが112位、ブラジルが130位、そしてインドが132位である。つまりBRICsはどれも外国資本にとってはやりにくい国であるということだ。
やりにくさの最大の理由は、やはり政府による規制ということになるだろう。インドも高度成長期に改革をサボったといわれる。労働、エネルギー、そして土地開発。これらの改革を進めていれば、そこに外国資本が投資するいい循環が生まれていたかもしれない。しかし長期投資を促すための改革が遅れ、結果的に外国資本は逃げ出してしまった。
それに国民会議率いるインド政府が、ともすればポピュリスト的な政策をとる傾向にあるのもインドの弱点である。そのおかげで毎年の財政赤字はGDPの10%にも達している(日本ですらそこまでは悪くない)。2014年5月までに総選挙が実施されるため、シン政権はまた財政に負担をもたらす政策を発表するかもしれない。
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