コラム
国家の市場介入は国民を豊かにするのか?:藤田正美の時事日想(3/3 ページ)
BRICsの中でインドが行き詰まりつつある。2025年には中国を逆転して世界最大の人口を抱えることになる「世界最大の民主主義国」はどこへ向かうべきなのか。
さらにインドでは国有銀行の不良債権率が高いという問題もある。不良債権が融資額の10%から12%にも達するとされているが、もしこれが事実ならすでに「ゾンビ銀行」と呼んでもいいかもしれない(企業の債務比率が高いため、景気がさらに悪くなれば銀行は新しい資本を導入しなければならなくなるだろうが、その資金を誰が出すのかが問題だ)。
世界経済全体がなかなか浮上のきっかけを見いだせないなかで、これらの新興国がどのように動くのか。その方向性によっては、さらに問題の根を深くしてしまう可能性もある。フィナンシャルタイムズ紙は、8月22日付けの電子版で「BRICsのパーティは終わった、国家の役割を縮小すべきときだ(参照リンク)」と書いた。
この記事の中で、現在、これらの新興国はむしろ逆の方向に動こうとしていると書いている。つまり、より国家資本主義を強めることが解決策だと考えているというのだ。国家と市場の関係はこれまでにも繰り返し議論されてきた。一部の先進国で資源の配分を市場に任せるようになったのはそう昔の話ではない。その市場が失敗したために2012年までは国家資本主義がもてはやされた。国家はどこまで市場に介入すべきなのか、それが本当に国民を豊かにすることにつながるのか。まだその答は分からない。
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