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日本人所有の零戦が日本に「帰還」できない理由:伊吹太歩の世界の歩き方(2/5 ページ)
現存する飛行可能な零戦を日本の財産として帰国させる動きがある。しかもそれは日本人が所有しているというのだ。だが、なかなか前進しないのはなぜなのか?
10年、合計38万時間かけてレストアされた零戦
石塚氏が同機を購入したのは2008年のことだ。1970年代にニューギニアで発見され米国に運ばれた後、1980年代に米国人飛行機コレクター、ボブ・ハンナー氏が購入。ハンナー氏は、実に10年、時間にして合計38万時間をかけて完全な修復を施し、零戦が本来持つ飛行を可能にしたのだ。同機は真珠湾攻撃をテーマにした2001年のハリウッド映画『パールハーバー』の撮影でCGのモデルとしても使用された。
ニュージーランドでフライトジャケットやライダースジャケット生産・販売する会社を経営する栃木県出身の石塚氏は、2004年に初めて米国でこの零戦に出会った。日本のある博物館関係者から、ぜひとも博物館のために零戦を探してほしいという話があって零戦を探していたからだ。
仕事柄、航空機関係者や大戦機のコレクター、ファッションデザイナー、映画関係者などと親交のあった石塚氏は、ハンナー氏が所有していた零戦の存在を知り、3億5000万円で購入。ハンナー氏はその零戦を手放す条件として「日本に里帰りさせるのであれば売却してもいい」と石塚氏に伝えたという。
石塚氏は「零戦の帰国は私にとっても夢。零戦を『その生まれ故郷』である日本の遺産として保存したいのです。そして後世にそれを伝えていきたいというのが切なる希望なのです」という。
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