少子高齢化の切り札? 独身男を襲う「カニばさみ」の恐怖:窪田順生の時事日想(2/4 ページ)
厚労省の調査によると、独身女性の3人に1人は「専業主婦になりたい」だったが、独身男性の5人に1人は「専業主婦になってほしい」。今の若い男は甲斐性なしね、といった声が聞こえてきそうだが、男女間の経済感覚の“ギャップ”を解消しなければ、大衆は踊らないだろう。
男女間のズレが如実に
当時は深夜の猥談(わいだん)みたいなもんだと思って、特に真に受けなかったが、30手前ぐらいになって、知り合いが次々と身を固めていくなかで、ひとりの行員が結婚直前、酔いもあってこんなことを洩(も)らしていた。
「やられたよ、まさか本当にカニばさみされるとは……」
こういう経験があるので、女性誌『anan(アンアン)』が「プロポーズから出産まで一気に叶える! 授かり婚はこんなにスバラシイ!」なんて感じで、バンバンできちゃった婚を推奨していても、さして驚かなかった。
不景気になれば、安定収入を望む男を取っ捕まえようという女性があらわれるのは自然の流れだし、そのなかには、男を逃がさないため、「戦略的妊娠」をしようという思い切った人だっている。
時代を読んで売り飛ばすのが雑誌というものなのだから、周りがとやかく批判するような話でもない。
だが、このような「授かり婚」が増加すれば、少子化対策になるみたいな考えはちょっと違うのではないかと思う。女性たちが妊娠に前のめりになればなるほど、若い男は結婚から逃げていくからだ。
銀行員が「カニばさみ」されるのは、彼らの収入が安定して右肩上がりだったからだが、これから結婚する若い世代の収入はかなり不透明で、先行きが暗い。つまり、いくら「カニばさみ」されても男性側の稼ぎだけでは、一家を養うことができない可能性が高いのだ。
そういう男女間のズレが如実にあらわれているのが、厚生労働省が若年層を対象に実施した「若者の意識調査」だ。まず、独身女性は3人に1人を超える34.2%が、「結婚後は専業主婦になりたい」と回答している。不景気で若い女性の働き先もなかなか少ない今、気持ちは痛いほど分かる。
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