少子高齢化の切り札? 独身男を襲う「カニばさみ」の恐怖:窪田順生の時事日想(3/4 ページ)
厚労省の調査によると、独身女性の3人に1人は「専業主婦になりたい」だったが、独身男性の5人に1人は「専業主婦になってほしい」。今の若い男は甲斐性なしね、といった声が聞こえてきそうだが、男女間の経済感覚の“ギャップ”を解消しなければ、大衆は踊らないだろう。
男女間の経済感覚の“ギャップ”
では、そんな女性たちの声に対して、独身男性が「専業主婦になってほしい」と望むのは19.3%と5人に1人未満。生活が苦しいから、一緒に汗水たらして働いてちょうだいなというわけだ。
今の若い男は甲斐性なしね、なんてお怒りの声が聞こえてきそうだが、終身雇用も崩壊し、黙っていれば基本給が上がっていくなんて時代ではないのだから、男たちの苦悩もよく分かる。
こういう男女間の経済感覚の“ギャップ”を解消しない限りは、いくら戦前のように「産めよ増やせよ」と政府が大号令をかけても、大衆は踊らない。
稼ぎの少ない男たちが望むよう、「働く妻」を増やすか、あるいは専業主婦志向の女性たちに「カニばさみ」をしたい、と思わせるような銀行員的な高収入な若い男を増やすか。
実体経済が成長していない今、後者は難しい。だから、アベノミクスでは「女性の活用」ということを目玉に打ち出した。保育園を整備したり、長期の育休を認めたりして、もっと女性にも働いていただければ、「専業主夫」になりたい男たちも“父”になれる。
すると、どういうわけか、育休をとる女性にバッシングが始まった。エラい女の先生は「妊娠したら仕事をやめろ」とか言い出して、やたらと専業主婦を持ち上げる動きまで出てきた。例えば、大ヒットドラマ『半沢直樹』の妻・花は原作では、広告代理店勤務のワーキングマザーで、半沢から「自分の都合を優先させる女」と憎々しげに思われている存在だった。それがドラマではいつの間にやら、社宅の奥様会に顔を出し、夫をかいがいしく支える「専業主婦」に変更されている。
関連記事
- ブラック企業問題はなぜ「辞めればいいじゃん」で解決しないのか
従業員を劣悪な環境で働かせ、使い捨てにする――。いわゆるブラック企業が社会問題になっているが、なぜそこで働く人は会社を辞めようとしないのか。その背景にあるのは……。 - なぜマスコミはインチキをしても「ごめんなさい」と言わないのか
普通の企業ならば謝罪会見モノの不祥事が発覚しても、しれっとした顔でやり過ごしている業界がある。言わずと知れた、マスコミだ。なぜ彼らは意地でも頭を下げないのか。そこには一般人にははかりしれぬ“美学”があったのだ。 - 借金大国日本で“踏み倒す人”が急増している理由
国民年金、給食費、授業料、治療費……今、公的な支払いを踏み倒す人が増えている。この背景には、いったいどんな「裏」があるのだろうか? - NHKが、火災ホテルを「ラブホテル」と報じない理由
言葉を生業にしているマスコミだが、会社によってビミョーに違いがあることをご存じだろうか。その「裏」には、「華道」や「茶道」と同じく「報道」ならではの作法があるという。 - ハリウッド映画に登場する「忍者」は、なぜ韓国人が演じているのか
「韓国にも忍者がいる」と聞いても、そんなバカなと思う人も多いだろう。いや、韓国にも忍者がいる、というよりもそもそも「忍者」のルーツは朝鮮半島だ、と訴える人たちがいる。またまたご冗談でしょ、と思っていたら、彼らは大マジメなのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.