シリアの化学兵器攻撃は「世紀の大ウソ」なのか!?:伊吹太歩の時事日想(1/4 ページ)
シリアでサリンによる攻撃が行われた可能性は高い。だが、誰が実行したのか? シリア在住のキリスト教修道院長の検証リポートが世界の注目を集めている。
著者プロフィール:伊吹太歩
出版社勤務後、世界のカルチャーから政治、エンタメまで幅広く取材、夕刊紙を中心に週刊誌「週刊現代」「週刊ポスト」「アサヒ芸能」などで活躍するライター。翻訳・編集にも携わる。世界を旅して現地人との親睦を深めた経験から、世界的なニュースで生の声を直接拾いながら読者に伝えることを信条としている。
今さらだが、米国によるシリアの空爆騒動は何だったのか。米国によるシリアへの懲罰攻撃が回避された顛末(てんまつ)を簡単に振り返ってみたい。
2013年8月21日、首都ダマスカス郊外のゴウタでシリア政府が化学兵器を使用し、大勢の市民が死亡したというニュースが世界を駆け巡った。化学兵器の使用疑惑自体は以前からあったのだが、この報道が事態を大きく動かした。化学兵器の使用を「越えてはならない一線」と明確にしていた米国がシリア空爆に向け動き始めたのだ。
空爆がいよいよ現実味を帯びてきたころ、英国を訪問したジョン・ケリー米国務長官が記者会見で失言をした。シリア政府が空爆を回避するにはどうすればいいのかという記者からの質問に、ケリーは「来週中に本当にすべての化学兵器を国際社会に手渡すのならばだ」と答えた。
この発言がすべてを変えてしまった。米国務省は慌てて「ケリー長官の発言は言葉のあや」だと火消しに走ったが、時すでに遅し。これを好機とみたロシアが一気に攻勢をかけた。
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相はすぐに「シリアが国際的な管理を受け入れればどうか」という提案を発表。シリアの化学兵器廃棄に向けて仲介に乗り出し、結局アサド政権も合意した――というのがこれまでの流れだ。
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