シリアの化学兵器攻撃は「世紀の大ウソ」なのか!?:伊吹太歩の時事日想(3/4 ページ)
シリアでサリンによる攻撃が行われた可能性は高い。だが、誰が実行したのか? シリア在住のキリスト教修道院長の検証リポートが世界の注目を集めている。
なぜ犠牲者の映像が子供たちばかりなのか?
報告書ではどんなことが明らかにされているのか。マザー・アグネスらは、攻撃直後に反体制派関係者によって公表された35のビデオ映像の中から、13本の映像を選んで検証。ビデオの矛盾点などを写真付きの「解説」で明らかにしようと試みた。また、公表された写真なども検証対象にしている。
まず化学兵器による攻撃が行われる前のゴウタの現地状況を、専門家や住民によるコメントと写真などから説明する。例えば攻撃があったとされるゴウタの東部は内戦が始まってからシリア政府軍の激しい攻撃にさらされ、町は半分破壊され、住民のほとんどがどこかへ非難してしまっていた。つまり、町はほとんど空に近い状態で、現在残るのは反体制派のメンバーとその家族くらいだと指摘する。
その上で、ビデオについていくつかの疑問点を挙げる。ビデオでは子供ばかりが死んでおり、親の姿はみえないこと。皆が眠っている真夜中に攻撃され、病院関係者もビデオで「パジャマの患者が多数運び込まれた」と言っているのに死体はほとんどが普段着のままであること、などだ。
さらに、エジプトの首都カイロで起きたデモ現場で撮影されたビデオが、化学兵器の被害者であるとして出回っている事実も明らかにしている。
報告書が訴える最大の疑惑は、ビデオに映る子供たちの不自然さだ。マザー・アグネスらは、被害者の服装や顔などを注意深く比較している。子供の死体が大勢集められた現場のビデオに、違う場所で被害者として撮影されていた子供がいたり、子供が死んでいた現場の生々しい映像は、別のビデオでは子供の数が増えている……といった指摘だ。
もちろん、これをもってゴウタで化学兵器による攻撃がなかったとは言えない。マザー・アグネスが都合のいい情報だけを抽出している可能性だってある。
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