今、なぜ「僕は死にましぇん」? フジテレビが中国で『101回目のプロポーズ』をリメイクする理由:それ、ちょっと気になる!(1/4 ページ)
「僕は死にましぇん!」――武田鉄矢がフジの月9で叫んだセリフは社会現象にもなった。あれから22年。フジテレビが中国映画として「101回目のプロポーズ」をリメイクした。
連載「オカちゃんの『それ、ちょっと気になる!』」とは?:
Business Media 誠編集部には毎日、数百件のニュースリリースが舞い込みます。その中から、「何だか、それ、ちょっと気になる!」と思ったネタを、いわゆる「団塊ジュニア」と定義される最終年に生まれたアラフォー編集者オカダが仕事と趣味を兼ねて取材します!
「僕は死にましぇん! あなたが好きだから」といえば、ドラマ「101回目のプロポーズ」で武田鉄矢演じる星野達郎が、走ってくるダンプカーの前に飛び出した後に浅野温子演じるヒロイン矢吹薫に向けて絶叫した有名なセリフ。1991年の流行語にもなったので(参照リンク)、ドラマを見ていなかった世代でもこのセリフだけは知っている、という人も多いだろう。
あれから22年の時を経て、まさか同じセリフを聞くとは思ってもいなかった。それもフジテレビが出資した中国映画『101次求婚』(日本名:『101回目のプロポーズ〜SAY YES〜』、日本でも2013年10月19日公開)で……。しかも武田鉄矢本人も星野達郎役として出演しているし、一体どういうことなんだ?
聞けば2013年2月に中国で公開された本作は、動員数660万人、興行収入30億円を超えるヒットとなったのだとか。なぜ、日本にルーツを持つ映画が中国人にも受けたのか? そもそもなぜ今、フジテレビが中国映画を作っているのか? ちょっとどころか、かなり気になる! 本作のプロデューサーの1人であるフジテレビの細貝康介さんを直撃した。
反日感情なんてない、現場にあったのは原作へのリスペクトだった
「この映画の企画が持ち上がったのが2009年です。映画製作中に『反日デモ』があって大変だったことは確かですが、すでに回復していますね。あれは中国政府によるキャンペーンというか一過性のものという感じです。むしろ、中国人スタッフの原作へのリスペクトがものすごいんです。ドラマのテーマ性とかそれぞれのキャラクターが原作に非常に忠実。オリジナルで大切にしていたものが的確に翻案されています。原作で得られた感動と遜色(そんしょく)ないレベルのものがこの映画からも受け取れるはずです」
細貝さんの言うとおり、本作は原作や日本に対するリスペクトにあふれていた。冒頭で紹介した「僕は死にましぇん!」だって再現されているし、結婚指輪代わりのナットは出てくるし、達郎がボーナス全額を突っ込んだ馬券は宝くじに変更されているものの同じエピソードだし、登場人物が乗っているクルマはトヨタのカムリだし。正直なところ、そこまで日本をプッシュしちゃっていいの? というレベルだ。
それに役名にも原作へのリスペクトが隠されている。主人公は、99回もお見合いに失敗したお人好しの内装業者、黄達(ホアン・ダー)。少なくともイケメンではない。ヒロインは3年前に婚約者が行方不明となり心に傷を負っている美人チェリスト、葉薫(イエ・シュン)。そして、イエ・シュンの親友で、自信が持てないホアン・ダーの恋の相談に乗る桃子(タオズ)。原作を知る人なら気づくだろう。それぞれ原作の星野達郎、矢吹薫、石毛桃子になぞらえているのだ。これは中国サイドのアイデアだ。
もっとも全12話を106分の映画に収めるために削られたエピソードや登場人物もいる。また、ストーリー後半は原作とは違う演出になっている。一番大きな変更は、江口洋介演じる達郎の弟、純平と、田中律子演じる薫の妹、千恵が登場しないことだろう。
「星野兄弟と矢吹姉妹の設定は、中国の一人っ子政策に合わないということで変更されましたが、達郎と純平の掛け合いは原作の大きな魅力の1つでした。このテイストはどうしても入れたいと中国側と相談を重ねた結果、ホアン・ダーが家族同然のように面倒を見ている部下たちが生まれました。原作の空気を中国ならではのリアリティで実現できたと思っています」
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