嫌煙家が主張する「タバコ1箱700円」を阻む“霞ヶ関の論理”とは:窪田順生の時事日想(3/4 ページ)
たばこが値上がりをする。えっ、また? と思う人も多いだろうが、消費増税に合わせて値上げをする予定だ。一方、嫌煙家や厚労省は「1箱700円」を訴えているが、これはかなりハードルが高い。なぜなら“霞ヶ関の論理”が関係しているからだ。
“ねじれ”にメスを入れた
国民に病をまきちらすテロリストかと思ったら、実はバックに政府がいた、という「24 Twenty-four」とかでよくあった構図だが、当然この“ねじれ”にメスを入れようとした政治家もいた。
例えば、菅直人さんなんかもそうだ。
今でこそ身内の民主党からも疎(うと)まれるような“戦犯”扱いだが、社民連やさきがけの時代は、市民活動家出身の政治家らしく、カイワレを食べるなど大活躍だった。そんな菅さんが目をつけたのが、「たばこ」だった。JTや関連団体には大蔵官僚の主流、主計局OBやらが天下って幅をきかせていた。
その力の源は、大蔵省がたばこを牛耳る法的根拠である「たばこ事業法」にある。といわけで、まだ活動家気質が抜けきれず、「イラ菅」なんて呼ばれていた時代、大蔵省に乗り込んで、この悪法を改正せよと怒鳴り込んだこともある、と当時一緒に乗り込んだ禁煙活動家が教えてくれた。
それから時は流れ、菅さんが財務大臣の座についた。野党時代に掲げていたのは、確か主計局の力を奪うこと。その第一歩として、「たばこ事業法」に手をつける。昔の活動家仲間はそう思った。
しかし、彼は意外な行動にでる。なんと、昔の仲間との関係をぷつんと断つのだ。財務大臣に就任してほどなく、先ほどの「禁煙活動家」に取材をしたことがある。「菅直人」の名を出した途端、彼の顔は怒りで歪んだ。
「電話をかけても取り次がれない。事務所にファックスを送っても返事がない。大臣になって財務官僚に籠絡(ろうらく)されてしまったのでしょう。もう信用できませんよ」
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