出版不況が続くのに、編集者が生き残るワケ:これからの働き方、新時代のリーダー(中編)(1/4 ページ)
「自分の仕事は、今後も大丈夫かなあ」と不安に感じている人も多いのでは。作家のエージェント集団「コルク」の佐渡島社長は「10年後でも編集者は食うに困らない」という。「出版不況」が叫ばれているのに、なぜ編集者は食っていけるのだろうか。
これからの働き方、新時代のリーダー:
佐渡島庸平――。彼の名前が一般の人に注目され始めたのは、1年ほど前からだ。2012年10月、講談社を辞めて、エージェント集団「コルク」を設立。彼は『モーニング』の編集者として、たくさんのヒット作を世に送り出してきた。『バガボンド』『ドランゴン桜』『働きマン』『宇宙兄弟』といった漫画だけではなく、小説にも関わってきた。いわば“ヒット作請負人”として活躍してきたが、なぜ講談社を飛び出し、エージェントの道を選んだのだろうか。
「エージェント」を直訳すると「交渉人」とか「代理人」という意味だが、中には「“中抜き業者”のことでしょ」と思っている人も多いだろう。わざわざ誤解を招きそうな言葉を使っているが、佐渡島さんは「編集者を辞めたわけではありません。作家側の人間になるために『エージェント』という立場にこだわりました」という。これはどういう意味なのか? 編集プロダクションやフリーの編集者とは何が違うのか? Business Media 誠編集部の土肥義則が聞いてきた。全3回でお送りする。
→作家のエージェントって何? 『ドラゴン桜』『宇宙兄弟』の編集者に聞く(前編)
→本記事、中編
プロフィール:
佐渡島庸平
1979年生まれ。中学時代を南アフリカ共和国で過ごし、灘高校に進学。2002年に東京大学文学部を卒業後、講談社に入社し、モーニング編集部で井上雄彦『バガボンド』、安野モヨコ『さくらん』のサブ担当を務める。2003年に立ち上げた三田紀房『ドラゴン桜』は600万部のセールスを記録。小山宙哉『宇宙兄弟』も累計1000万部超のメガヒットに育て上げた。伊坂幸太郎『モダンタイムス』、平野啓一郎『空白を満たしなさい』など小説連載も担当。2012年10月、講談社を退社し、作家エージェント会社、コルクを創業。
消費者がモノを「買う理由」
土肥:佐渡島さんは2012年10月にエージェント集団「コルク」を立ち上げられました。前回は「作家のエージェントって何?」「どんな仕事をしているの?」といった話をうかがいました。
今回は、実際に働いてみてどうだったのか。そんな話を中心に聞かせてください。まず起業されて、想像していたことと違うなあと思ったことってありますか。
佐渡島:想像と全く違いましたね。「編集者」という職業が、思っていた以上にニーズがあることが分かりました。
ここで少し歴史を振り返らせてください。戦後はモノが足りない時代でした。そのときには、モノをつくる人間が必要とされました。次に、モノの質を上げる時代に。そのときにはモノをつくるだけではなく、技術者が重宝されました。そして、デザインが重視される時代になりました。
30年前は誌面も編集者がデザインしていましたが、デザイナーという職種が出版業界にかかわるようになったのは、この20年ほどのこと。出版業界だけでなく、さまざまな産業にデザイナーが入り込みました。
バブル経済が弾け、デフレが続きました。今は、質がよく、デザインもよく、安いモノがあふれています。そしてこれからの時代、消費者が商品を購入する理由は、値段、質、デザインだけではなくなってくると思っています。人々が商品に求めていること……それは買う理由なんですよ。
土肥:買う理由?
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