出版不況が続くのに、編集者が生き残るワケ:これからの働き方、新時代のリーダー(中編)(2/4 ページ)
「自分の仕事は、今後も大丈夫かなあ」と不安に感じている人も多いのでは。作家のエージェント集団「コルク」の佐渡島社長は「10年後でも編集者は食うに困らない」という。「出版不況」が叫ばれているのに、なぜ編集者は食っていけるのだろうか。
未来の編集者像
佐渡島:お客さんに「買う理由」をつくってあげなければいけません。多くの企業は広告のほかに、SNSやアプリなどを使って、さまざまなことを試みていますよね。お客さんに自社の商品を買ってもらおうとしているのですが、そこには巧みな「ストーリー」が必要です。なので、いま多くの企業で編集者を必要としていくと思うのです。
編集者というのは、流れでモノを演出することが得意ですよね。例えば、ストーリーのどこに伏線を張って、どういうオチにするのか――といった訓練を積んでいる。
これまで編集者というのは、転職が難しい職種でした。他の出版社に転職するしかない、といった時代が長く続いていました。しかしこれからは、フリーになってもたくさんの仕事が舞い込んでくる時代がやって来るのではないでしょうか。かつてフリーのデザイナーがたくさん増えたように、これからはフリーの編集者が増えていくと思っています。
土肥:従来の編集者といえば、作家から原稿をもらって、それを編集して、本にする。これがいわばゴールだったのですが、佐渡島さんが言う“未来の編集者像”はかなり違う。編集をしなくても編集者といった感じで、従来の“枠”を越えていますね。
佐渡島:何を編集するのかが、重要になってくるでしょうね。デザイナーはクルマや家電製品……といった感じで、たくさんのモノをデザインしてきました。そして社会や街もデザインするようになりました。
デザイナーが歩んできた歴史のように、編集者も「企業を編集する」「街を編集する」「社会を編集する」時代になると思っています。
土肥:デザイナーが「街をデザインする」というのは理解できます。緑を増やしたり、オブジェを置いたり、看板を設置したり、といった感じで。でも編集者が「街を編集する」ってどういうことでしょうか?
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