「竜飛海底駅」が教えてくれた、新たな“商機”:杉山淳一の時事日想(3/5 ページ)
JR北海道の津軽海峡線「竜飛海底駅」の公開が終了した。見学できるのはツアー客のみだったが、来年の3月31日には駅自体も廃止となる。しかし、この施設の本来の役目は非常口である。駅としての役割のほうが「例外的処置」だったのだ。
竜飛海底駅廃止は「北斗星」「カシオペア」廃止の遠因
11月7日、いくつかの新聞でJR東日本が寝台特急の「北斗星」「カシオペア」「トワイライトエクスプレス」の廃止を報じた。「北斗星」は2014年度末に廃止、「カシオペア」「トワイライトエクスプレス」は2015年度末の廃止を検討しているという。数日前には寝台特急「あけぼの」の2014年3月廃止がスクープされたばかりで、こぞって裏取りと追加情報獲得に動いたようだ。
これら「北斗星」などの廃止については、先週の本コラムの入稿後、掲載前というタイミングだった(関連記事)。先週、慌てて追記しようかとも思ったけれど、あえてやめた。廃止の理由が「あけぼの」とは違うと思ったからだ。「あけぼの」は本州内の列車。「北斗星」「カシオペア」「トワイライトエクスプレス」は青函トンネルを通る。北海道新幹線の開業を見据えた廃止になるという。客車が老朽化した「北斗星」「トワイライトエクスプレス」はともかく、まだまだ活躍できそうな「カシオペア」も廃止。これも竜飛海底駅の廃止が関係していると私は思っている。
報道によると、竜飛海底駅、吉岡海底駅、そして北海道側の津軽海峡線知内駅を廃止する理由は、各駅のホームを撤去する必要があるからだという。竜飛海底駅の狭いホームでさえ、新幹線車両の運行には支障があるらしい。ホームを削り取ると、今度は在来線車両が停車した場合にドアとホームの隙間が大きくなり危険である。都会の駅で見かける車椅子利用者用の渡り板を使う方法もあるとはいえ、とても暗い場所である上に、寝台特急で眠りから引き起こされた乗客の足元は不安。避難用の非常口が危険な場所になっては本末転倒である。
昼行特急「白鳥」も、新幹線に役目を譲って廃止となる。そして「竜飛定点」「吉岡定点」は、北海道新幹線と貨物列車乗務員用の非常口となる。
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