ワーキングマザーはお荷物か?――あなたの会社が「ホワイト企業」になる方法:これからの働き方、新時代のリーダー(後編)(1/5 ページ)
第一子を出産した女性の6割が会社をやめる日本。最近はワーキングマザーも増えているが、どう扱っていいか分からない……という企業も多いのではないだろうか。本記事ではワーキングマザーをどう評価し、どう戦力にしていくかを考える。
リニューアル記念企画「これからの働き方、新時代のリーダー」
「アクションリーダーの『知りたい!』に応えるオンラインビジネスメディア」を統一コンセプトとして、9月2日にリニューアルしたBusiness Media 誠 & 誠 Biz.ID。リニューアルを記念して、スペシャルインタビュー企画を掲載していきます。
本企画では、Business Media 誠編集部と誠 Biz.ID編集部がそれぞれテーマを決めてインタビューや対談を行います。Business Media 誠では「アクションリーダーに会いに行く」、そして誠 Biz.IDでは「時代の変化に合った働き方」をテーマに、さまざまな識者の方にお話を聞いていきます。
→リニューアル記念企画「これからの働き方、新時代のリーダー」バックナンバー
新卒採用の段階では、男子学生よりも女子学生のほうが入社試験などの結果が優秀で、採用には男子学生に"げたを履かせて”あげないと新入社員が女性ばかりになってしまう、というのはよく聞く話である。
入社後も、熱心に働き、良い結果を出す若い女性社員は多い。それでも多くの女性社員が出産を機に会社を辞めてしまう。さらに女性の管理職や役員ともなれば数は少なく、そういう人たちは家庭の心配をほとんどせず仕事に全力投球できるバリバリのキャリアウーマン、いわゆる「バリキャリ」であることが多い。それだけ、育児と仕事の両立は難しいからだ。
それでも最近では子どもを出産したあと、時短勤務などの制度を使って会社へ復帰する女性社員が増えてきた。しかしワーキングマザーには補助的な業務しか頼んでいない……というのが多くの企業の現実ではないだろうか。
前回のインタビューでは(参照記事)、非ブラック企業の中でも、「ホワイト企業」とはダイバーシティ経営に優れ、女性が働き続けやすく、活躍できる企業であり、ホワイト企業は業績も優れている傾向があると聞いた。もし自分の会社で、ワーキングマザーとして復帰した女性社員を戦力として生かそうと思ったらどのようにすればいいのだろうか? 『ホワイト企業』(文藝春秋)を監修した経済産業省 経済社会政策室 室長の坂本里和さんに、その具体的な処方箋を聞いていく。聞き手はBusiness Media 誠編集長の吉岡綾乃。
→インタビュー前編:就活生・転職者必読! 経産省女性室長に聞く、「ホワイト企業」の入り方
「マミートラック」をなくしていくには
吉岡: 坂本さんは、大学を卒業後通産省(現在は経済産業省)に入省、いわゆる"キャリア官僚"をしながら4人(!)のお子さんを育ててきている、現役のワーキングマザーですよね。その一方で、現在は室長としてワーキングマザーを含む部下をマネージする管理職でもあります。ワーキングマザーの立場も、ワーキングマザーを部下に持つマネージャーの立場と両方の経験から、ここからはさらに具体的なお話を聞かせてください。
女性から就職先として企業を見た場合に、働きやすい企業、つまり"ホワイト企業"かどうかを見極めるには、2つの評価軸があるとお話いただきました。「働き続けやすさ」という軸、つまり育休や時短勤務といった仕事と育児を両立する制度に注目しがちだが、それだけではなく、「活躍しやすさ」という軸も大事である、と(参照記事)。
ただ実際には、この2つを両立させるのは非常に難しいことですよね。多くの会社では、産休・育休を終えて職場に復帰してきた女性社員に対し、出産前と同じ仕事を与えることは非常に少ないと思うんです。親が一緒に住んでいて子育てを肩代わりしてくれる、という事情でもない限り、ワーキングマザーは「保育園のお迎えがあるので、毎日必ず定時に帰る」「子どもが熱を出したら休まざるを得ない」といった事態を避けて通れません。企業から見れば、フルタイムで働けない社員に、責任の重い仕事を任せるわけにもいかないからと、補助的な仕事、楽な仕事に回すケースが多いのではないでしょうか。
坂本: いわゆる「マミートラック」ですね。ママ社員向けのキャリアコースというような意味です。独身時代に営業の第一線で働いていた女性が、出産を機に管理部門などの内勤に回る、などの例が多いですよね。会社を辞めてしまうよりはいいですし、過渡期としては仕方ありませんが、「女性に対して優しい」けれど、キャリアアップにはつながりにくい。時間制約があるというだけで、それまでのキャリアが中断してしまうのはとてももったいないことです。
吉岡: 私も同感です。ただ、ワーキングマザーが補助的な仕事ではなく、出産前にしてきたのに近いような仕事をフルでやろうとした場合、どうしても周りにしわ寄せが出てしまうという現実があります。例えば定時で帰ったあとに突発的な作業が発生して、それを同じ部署の男性社員が肩代わりする……こういう不満がだんだんたまっていく、といった話はよく聞きます。職場の同じチームにワーキングマザーがいる、という場合に、うまくチームを回すための心得などはありますか。
坂本: 全体の働き方が変わらない中で、女性、特にワーキングマザーの働きやすさだけを考慮すると、周りの男性社員にしわ寄せがいくというのは、現実問題としてどうしても起こります。時間の制約がある人と、ない人との間で公平感を持つのはやはり難しいですから。子どもが熱を出したから休む、といった突発的な事態はどうしたって起こってしまう。これは仕方ないことで、どう対応するか? それを考えるほうが建設的ですよね。
関連記事
- これからの働き方、新時代のリーダー:就活生・転職者必読! 経産省女性室長に聞く、「ホワイト企業」の入り方
流行語にもなった「ブラック企業」に対し、非ブラック企業の中でもさらに優良な“ホワイト企業”を紹介した本が出版された。ホワイト企業とは何か。ホワイト企業を探すにはどうしたら? 経済産業省の坂本里和さんに聞いてみた。 - 来日中、FacebookのCOOが語る「女性の社会進出に必要な3つのこと」
Facebookのナンバー2、COOのシェリル・サンドバーグ氏が来日中だ。安倍首相と会談したり、著書『LEAN IN』の出版イベントに参加。記者会見で語った「女性の社会進出のために必要な3つこと」について、ほぼ全文を掲載する。 - これからの働き方、新時代のリーダー:仕事で他の人に差を付けるには? 池上流「選挙特番の作り方」――池上彰×吉岡綾乃(後編)
7月に参議院選挙が行われた夜、民放各局が選挙特番を放送する中で圧勝したのは池上彰さんが司会をしたテレビ東京でした。あの番組はどのように作られたのか? 池上×吉岡対談後編は、不利な条件下でも他の人に差を付ける仕事をするための考え方、池上さんの読書法に迫ります。 - これからの働き方、新時代のリーダー:LINE、NAVERまとめはなぜ強いのか?――LINE株式会社 森川亮社長8000字インタビュー
人気サービス「NAVERまとめ」や、世界で2億3000万ユーザーが利用する「LINE」を急成長させているLINE株式会社の森川社長。矢継ぎ早にアプリやサービスをリリースする開発力や、「計画を立てない」「事業計画を出さない」といった独特の経営方針について、じっくり聞いてきました。 - これからの働き方、新時代のリーダー:最初は売れなかった? これまで語られなかった「じゃがりこ」の裏話
「じゃがりこ」といえば、カリカリ・サクサクした独特の食感が特徴だ。カルビーが1995年に発売して以来、ロングセラー商品となっているが、開発秘話はあまり知られていない。開発に携わった担当者が多くを語らなかったからだが、18年経った今、当時の裏話を打ち明けてくれた。 - これからの働き方、新時代のリーダー:失敗することにびびってないか?――メガネECベンチャー創業者がスタンフォードで学んだこと
メガネ専門のECサイト「Oh My Glasses」を立ち上げた若き起業家、清川忠康さん。大手証券会社などで企業再生ビジネスを手掛けていた同氏が留学先で受けた衝撃とは? - これからの働き方、新時代のリーダー・バックナンバー
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.