ワーキングマザーはお荷物か?――あなたの会社が「ホワイト企業」になる方法:これからの働き方、新時代のリーダー(後編)(2/5 ページ)
第一子を出産した女性の6割が会社をやめる日本。最近はワーキングマザーも増えているが、どう扱っていいか分からない……という企業も多いのではないだろうか。本記事ではワーキングマザーをどう評価し、どう戦力にしていくかを考える。
VPNやテレワークの導入で「働く時間、場所」の制約は乗り越えられる
吉岡: 実はBusiness Media 誠のメディア営業業務は、Kさんというワーキングマザーがメインに担当しています。Kさんは保育園のお迎えがあるので毎日定時に帰りますが、帰宅後も自宅で熱心に仕事をしてくれるんですね。誠編集部のメンバーは、普段Skypeのメッセージ機能でやりとりをしているので、深夜、急いで決めなくてはならないことをチャットですぐに相談することもあります。メールを出せば夜でもすぐに返信がある。また、これまでなら会社に来なくてはできないような仕事も、KさんはVPN環境※を使って自宅から会社にアクセスしてこなしている。
彼女を見ていて思うのは、「ITの発展や普及で、『会社にいなくてはできない仕事』は大きく減った。会社にフルタイムで来られない事情がある人でもフルタイム社員と同等に、いや、本人にやる気があれば男性のフルタイム社員以上に働けるのではないか?」ということなんです。
坂本: 本当に、そうなんです。ワーキングマザーが仕事の質を落とさずに、キャリアをつなげていくには、働く時間と場所の制約をなるだけ減らしていくことが有効です。時間でいえば、フレックスタイムにする。場所でいえば、在宅勤務やテレワークといった働き方ができるようにする。こうして柔軟な働き方ができると、「時間制約=ハンデ」ということにならず、育児中の女性も成果が上げやすくなります。私自身の経験でも、メールなどの普及によって、テレワークが可能になったのは非常に大きいと感じています。毎日定時前に退社し、会社を出たらいっさい連絡がつきません、ということだと、やはり、大事な仕事を任せにくい、という事情は分かりますから。
テレワークを推進しましょう、という話をすると、ときどき「過剰労働につながるのではないか」と心配する人がいるのですが、あくまでこれは、やる気がある人が柔軟に働いて成果を上げるために必要だから入れる仕組みなんですよね。あくまでも“選択肢を増やす”ということで、基本は「希望する人だけ使えるようにする」という形で導入しても良いと思います。
ワーキングマザーを部下に持ったマネージャーはどうすれば?
吉岡: Kさんの話を続けますね。彼女は非常に仕事熱心で、数年前に彼女が誠チームに参加してくれてから、すごくうまくいくようになってきています。ただ、営業部長である彼女の上司はやや戸惑っているようなんです。
さっきお話ししたとおり、Skypeやメールといった形で編集部とのコミュニケーションがとれている半面、そこに入っていない上司からは彼女がそうやって働いている姿は見えないんですよね。「会社にいないときもKは頑張っているようだ、でもどれくらい働いているのか把握するのが難しい」と。このように「ワーキングマザーを部下に持つと、評価が難しい」と感じているマネージャーは少なくないと思います。何か評価のポイントはあるのでしょうか。
坂本: ワーキングマザーを部下に持った場合、意識しておくとよい評価のポイントは、会社にいる時間の長さではなく、アウトプットで評価をするということ。専門家の先生に聞くと「1時間あたりの働き(生産性)で評価しましょう」とおっしゃるのですが、なかなかそれは難しいですよね。なので、まずは、一定期間でどれくらい成果を出したか、というところを評価してあげてほしいのです。
吉岡: なるほど。どうしても時間で見てしまいがちですよね。「あいつは夜遅くまで頑張っているな」とか。
坂本: そうなんです。でも、会社にいる時間の長さで貢献度を見るということになると、時短あるいは残業なし、という働きかたを選んだとたんにチャンスがなくなってしまいます。なので、時間ではなく、成果で評価してほしいのです。
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