マー君にも知ってもらいたい? 伝説の日本人検死官:窪田順生の時事日想(2/3 ページ)
トーマス・T・野口という人物をご存じだろうか。誰? と思うかもしれないが、米国の法医学界では有名な監察医だ。渡米時、彼の英語は全く通じなかったが、どのようにして成功を収めたのだろうか。
ドラマの主人公のモデルに
は? 誰それ? と思うかもしれないが、アメリカの法医学界ではその名が轟(とどろ)いている御年87歳の監察医(メディカル・イグザミナー)なのだ。トーマスといいながらも、コテコテの日本人である。
1962年から1982年の15年間、ロサンゼルスの検死局長を務め、女優のマリリン・モンローやロックシンガーのジャニス・ジョプリンなど数多くのハリウッドセレブの検死をおこなったほか、ロバート・ケネディ元司法長官など暗殺事件では解剖し、事件の真相解明に一役買った。
検死などの科学捜査で事件を解決するといえば、米国のドラマ『CSI:科学捜査班』が有名だが、あれは80年代に全米で放映された『ドクター刑事クインシー』というドラマがルーツにある。この主人公クインシーのモデルになったのが、何を隠そう、野口さんなのだ。彼のことについては『ハリウッド検視ファイル:トーマス野口の遺言』(新潮社刊、山田敏弘著)の中で詳しく紹介されているので、をぜひ読んでいただきたい。
そんな米国で成功を収めた野口さんも最初からとんとん拍子でキャリアを積んだわけではない。というより、スタートは最悪だった。
初めてロスの地にたって、アメリカ人に話しかけてもまったく通じないうえ、何を言っているのかサッパリ。それでもどうにか頑張っていたら1年後に結核を患い、1年半の入院生活を強いられる。メジャーに挑戦したらいきなりマイナー落ちしたようなものだ。
ただ、野口さんはそんなことでへこまない。英語が通じなくても、「これから覚えればいい」。入院中も、「英語習得と医師免許試験に向けたいい機会だ」と考え、ちょっとでも良くなるや入院している病院でインターンとして働かせてくれないかと言い出す。とにかく、ポジティブシンキングなのである。
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