「明日ママ」にケチをつけた慈恵病院が「モンスタークレーマー」と叩かれる理由:窪田順生の時事日想(2/3 ページ)
日本テレビがドラマ『明日、ママがいない』の内容を一部変更するという。「ドラマに出てくる児童養護施設の描写が実態とかけ離れている」といった批判を受けてのことだが、筆者の窪田氏は「この問題の本質はそこではない」と指摘する。
テレビ局の「負け方」
そういう意味では、描写に一定の配慮がなされるのは喜ばしいが、このタイミングで折れたというのがよろしくない。テレビ局の「負け方」としては最悪だからだ。
当初、大久保好男社長は「予定している脚本や演出を変更することはない」と断言をして強気の姿勢を崩さなかったが、スポンサー企業が相次いでCM放映を見合わせだした途端、変更検討に動き出した。
つまり、トップの発言よりスポンサーの意向が優先される、というテレビの「弱点」をこれ以上ない形でさらしたうえで負けたのだ。これならば第1話終了後、早々に白旗をあげていたほうがはるかにダメージが少ない。
テレビが普通の営利企業と決定的に異なるのは、政府の認可を受けた公的な言論機関でもあるということだ。その売り物である「言葉」が実は非常に虚ろいやすく、“大人の事情”によってクルクル翻されるものだとバレたら、その信頼性は一気に失墜する。
だから、言論機関はどんなに抗議の嵐が吹き荒れても己の過ちを認めない。『朝日新聞』が「従軍慰安婦」にまつわる過去の報道を覆さないのがいい例だ。
それは一流のテレビマンにもあてはまる。例えばフランスの人気司会者が、ゴールキーパーの川島永嗣選手の腕をCGで4本に増やした映像が見て、「福島の影響だろ」なんてジョークを飛ばした。“毒”のある笑いが支持されるのは世界共通で、スタジオも視聴者もドッカンドッカン、笑いをとった。
ただ、日本人からすればクスリとも笑えない。在仏日本大使館が抗議をしたら、テレビ局は形式どおり謝罪したが、当のご本人はケロッとした様子で、こんなことを言ってのけた。
「コップの中の津波のようなもの。フランスのテレビが何をするかを決めるのは日本じゃない」
カチンとくるかもしれないが、慈恵病院の抗議を「人権バカのせいでテレビがつまらなくなる」と切り捨てる人たちと言っていることはそれほど変わらない。
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