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「明日ママ」にケチをつけた慈恵病院が「モンスタークレーマー」と叩かれる理由:窪田順生の時事日想(3/3 ページ)
日本テレビがドラマ『明日、ママがいない』の内容を一部変更するという。「ドラマに出てくる児童養護施設の描写が実態とかけ離れている」といった批判を受けてのことだが、筆者の窪田氏は「この問題の本質はそこではない」と指摘する。
モンスタークレーマー
人間というのは、身近な者には気を遣うことができるが、「知らない世界」のことまでは配慮ができない。
いや、むしろ「知らない」ことを逆手にとって、イメージを増幅させておもしろおかしくネタにすることのほうが多い。
「明日ママ」の脚本監修している大御所は、「取材しないことで有名」らしい。つまり、「知らない世界」のイメージだけを増幅させて、「今世紀もっとも泣けるドラマ」(明日ママのキャッチコピー)を作ろうとした。「福島」や「奇形」の現実も知らず、イメージだけで笑いを取りにいったフランス人とよく似ている。
こういう「クリエーター」たちからすると、「知らない世界」でワーワー騒ぐ者たちは、「道理の通じぬ怪物」に見える。だから、慈恵病院を「モンスタークレーマー」だと勘違いする。世の中にはホンモノの「モンスター」がわんさかいるというのに。
彼らは「配慮」だけを求めた慈恵病院のように優しくない。グダグダの危機対応で露呈した「弱点」に対して執拗(しつよう)に攻撃し、放送の訂正や中止を求めてくる。
ナインティナインの岡村隆史さんが今回の騒動に関して「テレビは終わった」と言ったらしい。彼の意図している意味とはちょっと違うが、「終わった」という点は大いにうなずける。
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