なぜ歯ブラシを買うのに迷うのか? 客の行動を分析して、分かったこと:仕事をしたら“客の迷い”が見えてきた(前編)(6/6 ページ)
お店の棚の前で「これにしようかな。いや、こっちにしようかな」と迷ったことがある人も多いだろう。そんな人の“迷い”を可視化するサービスが、2013年からスタートしている。お客の購買行動を分析することで、どんなことが見えてきたのだろうか。
歯ブラシを買うのに迷う理由
深谷: 次に歯ブラシの事例を紹介しますね。歯ブラシの接触購買率は70%。
土肥: おお、基礎化粧品よりもかなりいいですね。問題なし。
深谷: 歯ブラシを手にした人のうち70%が購入してくれるので、この数字は悪くありません。でも別の問題があるんですよ。お客は歯ブラシを何度も手にして、やっと購入している。手に取るまでの時間も長いですし、手にした後の時間も長い。多くのお客が「これにしようかな、いや、あっちにしようかな」と悩んでいるんですよね。
考えてみたら、歯ブラシってたくさんの種類がありますよね。ヘッドが厚かったり・薄かったり、ネックが太かったり・細かったりと。歯への接触面積が広いとか、独自のコーティングをしているとか、商品によって特徴がいろいろありますよね。
土肥: 確かに。いつも使っている歯ブラシが売っていたらそれを買いますが、ない場合には迷ってしまいますよね。店頭にはたくさんの商品があるので、「うーん、いつも使っている歯ブラシに近いタイプのモノは……」といった感じで探していますね。
深谷: 歯ブラシだけでなく、男性は化粧品でもよく悩んでいます。例えば、ある商品に「ヒアルロン酸が配合されている」と書かれていても、その意味を知っている人は少ない。だから迷ってしまうんですよね。なのでお店は、歯ブラシや男性化粧品の売り場で、お客が迷わないような工夫をする必要があります。
土肥: お客の購買行動を可視化したことで、お店側にとってはいろいろなメリットがありますよね。「おー、なるほど! そういうことだったのか。じゃあ、売り場を変えてみよう」といった感じで。一方、お客側にとってはどんなメリットがあるのでしょうか?
深谷: 接触購買率が高いモノは外してはいけないので、お客にとって「興味があるモノは、いつ行っても買える」という状況になるのでは。一方で、手にするけど、結局は買わないモノはダメ。さらにダメなのは、手にしないモノ。これはもう棚に並んでいる意味がないですよね。お客の迷いを可視化することで、「いい売り場になる」というメリットがあるのではないでしょうか。
土肥: なるほど。さきほど基礎化粧品や歯ブラシの事例を挙げていただきましたが、このサービスに不向きな商品ってあるのでしょうか?
深谷: ありますね。それは……。
(つづく)
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