どこが違うの? 『JR時刻表』と『JTB時刻表』:杉山淳一の時事日想(2/5 ページ)
書店で発売されている「時刻表」は数種類ある。そのうちの2冊、交通新聞社の『JR時刻表』とJTBパブリッシングの『JTB時刻表』は売り場で目立つ。判型も価格も同じ、掲載されている列車の時刻も同じ。そんな商品がどうして2種類も存在しているのだろうか。
いまの主な購買層は趣味人たち?
時刻表を買うのはどんな人だろうか。企業の総務部や営業部など、社員の出張や交通費を管理する部門、出張が多い個人などのビジネスユーザー、一般旅行者、ホテルや旅行代理店などの旅行業界、そして鉄道ファンといったところだろう。ただし、ビジネスユーザーと一般旅行者については需要が激減した。言わずもがな。インターネットで簡単に乗り継ぎや運賃を検索できるからだ。筆者が通う大学の講師室にも最新号が置いてあるが、ひと月たっても、手垢が付かない。昔からの習慣で置いてあるだけのようだ。これでも年間約1万2000円の出費である。コストカットのターゲットにされてもおかしくない。
昨年「1980年代には毎月200万部を誇った『JTB時刻表』が、現在は十数万部程度になった」と報じられた。今も当時と同じくらい書店で景気よく積まれていると思うが、当時は企業などで定期購読の比率が高かっただろうし、書店もせっせと倉出しをしていたかもしれない。ライバルである『JR時刻表』のほうは日本雑誌協会にデータを登録しており、2013年10〜12月の印刷証明書付き発行部数は1号当たり平均9万6547となっている。ダイヤ改正号を含む期間の2013年1〜3月は同13万8260。このデータは2008年度から公開されていて、ざっと眺めると、やはり微減傾向だ。
『JR時刻表』も『JTB時刻表』も、過去の栄華に比べれば寂しいかぎり。しかし、出版業界全体からすると、いまどき10万部以上という雑誌は賞賛に値する。単価1000円以上の10万部クラスといえば、書店にとって優良商材である。ただし、部数は緩やかに下降し続けている。この事実は交通新聞社もJTBパブリッシングも自覚していて、ライバルに負けじと差別化を図っている。
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