どこが違うの? 『JR時刻表』と『JTB時刻表』:杉山淳一の時事日想(5/5 ページ)
書店で発売されている「時刻表」は数種類ある。そのうちの2冊、交通新聞社の『JR時刻表』とJTBパブリッシングの『JTB時刻表』は売り場で目立つ。判型も価格も同じ、掲載されている列車の時刻も同じ。そんな商品がどうして2種類も存在しているのだろうか。
結局、どちらを選ぶべきか
鉄道ファンは『JR時刻表』か『JTB時刻表』か、好みが明確な人が多いようだ。しかし、こだわりがなければ、時刻表データは同じだから、「カラー口絵の面白そうなほう」で選んで差し支えない。時刻表掲載ページの使いやすさを重視するなら、どちらかを決めて買い続け、慣れていくほうが便利だと思う。
ちなみに筆者は、旅の計画を立てる場合は『JR時刻表』を買う。理由は明確で、みどりの窓口に常備されているからだ。きっぷの購入前の再確認で同じ時刻表を使える。ただし、旅に持って出かける時刻表は『JTB時刻表』の縮刷版ともいうべき『小さな時刻表』だ。文字が小さくなり、時刻ときっぷに関するページ以外は省略されているため、携帯に便利である。そしてダイヤ改正の時は……両方(笑)。
ところで、時刻表のように「メインコンテンツの内容に差がなく、付加価値のみで勝負する」という本はほかにもある。うすうすお気づきだと思うが、テレビ番組表雑誌がそうだ。テレビ雑誌によって放送内容が異なるわけがない。地図帳も同じ。地図帳によって島や山があったりなかったりしては困る。だからデータページの基本は崩せない。これらも企画力と見せ方で勝負する世界である。
もっとも、テレビ番組表雑誌は番組データページが少なく、そのぶん付加価値に大量のページ数を使える。一方の時刻表はデータページが多い上に、定期購読者へ発送するための第3種郵便物の上限1キログラムを超えられない。つまり、わずかなページ数しか使えない。あの輝かしいカラーページは、編集者の企画力と苦心の賜物である。
同じデータを入手しながら、2つの異なるアウトプットが生まれる。また、類似商品の差別化の1つの事例としても、2つの時刻表は良いビジネス教材になりそうではないか。
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