「秋葉原に負けない聖地に」――JR高架下に「阿佐ヶ谷アニメストリート」が生まれるワケ:物販ではなく、体験を重視(4/4 ページ)
2014年3月29日にオープンする「阿佐ヶ谷アニメストリート」。なぜ阿佐ヶ谷にアニメをテーマにした商店街を作るのだろうか。2人のキーパーソンに聞いた。
いまどき何で、紙の新聞を発行するの?
阿佐ヶ谷アニメストリートでは、アニメ関連の情報などを中心にした紙の新聞を発行する。このデジタル全盛の時代、時代錯誤もはなはだしいと思うのだが、その戦略を聞いて納得した。
新聞の定価は100円(予定)だが、地域の商店や飲食店などを中心に広告主を募る。出稿者には、広告料に見合う部数を無料で進呈するが、彼らがそれを定価で販売するのか、それとも無料で配るのかは自由だ。
「部数を確保し広告媒体としての価値を高めていく」(橘川氏)という目算だ。なるほど、紙の新聞でないと、このスキームは維持できないだろう。
ほかにも、新しいビジネスモデルの実証実験の場としての活用も視野にいれている。例えば、ITを使った先進性の高い決済システムの導入実験をやりたい企業を誘致することもあり得るそうだ。これは筆者の個人的な願望だが、iBeaconsやPayPal Beacon(参照記事)を活用したO2Oの実証実験ができるといいなと思う。
阿佐ヶ谷アニメストリートは、テーマが統一された商店街だけに「各テナントが基本的に同じ目的を共有していることから、実験の同意を得やすい。企業はここで得た結果を他の場所や自社ビジネスへフィードバックすることができる」(橘川氏)のだという。
さて、最後に気になっていることを聞いてみた。阿佐ヶ谷アニメストリートに対して、地域の人はどのように考えているのだろうか。
いまのところ、好意的な意見が多いようだ。杉並区は、地域活性化の観点から大きな関心を抱いており、区の担当者から、地域との良好な関係を築くためのアドバイスを受けている。「近隣の商店会や神社などにあいさつに行くと、おおむねね好意的に受け止めてくれている」(橘川氏)
また、阿佐ヶ谷アニメストリートが、通学路と重なる杉並学院の場合、「学校側は防犯上の観点からとても好意的に受け止めてくれた」(橘川氏)という。人の目が増えることで、安全性が増すとの判断だろう。
阿佐ヶ谷駅を利用する生徒は必ずここを通ることになるのだが、帰宅の際は、おそらくこの商店街が最も賑わっている時間帯と重なるわけで、杉並学院には来年、アニメ好きの受験者が大挙して押し寄せる、なんてことになるかもしれない……。
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