新幹線などに搭載される「医師支援用具」は使われない……かも:杉山淳一の時事日想(4/6 ページ)
JR東日本は3月15日のダイヤ改正から、同社の新幹線と在来線特急列車の全編成に聴診器など「医師支援用具」を搭載すると発表した。持病を持つ人にとっては心強い施策だが、実際にそれを使ってくれる医師は現れるのだろうか。
「ドクターコールに応じる」と答えた医師は34%
「ドクターコール」について、医師はどう考えているのか。医師向けの雑誌『日経メディカル』が2007年にアンケートを実施し、5月号で集計結果と考察を発表している。とても参考なる資料で、ありがたいことに電子版で一部が公開されている。こちらも詳しくは該当記事を参照していただきたい(ドクターコールに『応じる』は34%にすぎず 医師758人の調査から、迷いと不安が浮き彫りに)。
758人の医師からの回答によると、「ドクターコールに応じる」と回答した医師は34%、「応じない」は17%、「その時になってみないと分からない」が48%だった。「その時に……」の48%の医師は、実際にその時になればきっと応じてくれる……と期待したいが、即答できないところに医師の悩みが現れている。「応じない」という17%は、その悩みについて自分なりの結論が出ているといえそうだ。
その「医師の悩み」の筆頭は「医療過誤責任を問われかねない」。つまり、失敗した場合のリスクの高さである。列車内という特殊な環境で、振動も騒音も多く、聴診器が満足に機能しない。野次馬が集まり過度の緊張にさらされるなど、病院内に比べて失敗する可能性も高い。そして失敗すれば、医療過誤として刑事、民事で訴えられるかもしれない。
前述のtogetterによると「病院外では医師賠償責任保険も効力がない」という意見があった。私は初めて知ったが、勤務医のほとんどは医療ミスによる賠償責任に備えて、自費で医師賠償責任保険に加入しているという。開業医は病院単位で同様の保険に入っている。真摯に職務を全うしても、患者にとって思わしくない結果であれば訴えられ、多額の債務によって人生を棒に振る可能性がある。きっと私の主治医も加入しているのだろう。そういえば、訴訟リスクの高さが理由で、産婦人科医のなり手が少ないというニュースを何度か目にした。大変な世の中になっている。
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