なぜアパレル業界で「工場直販」モデルがうまくいかないのか?:これからの働き方、新時代のリーダー(2/4 ページ)
低い人件費で大量生産が可能な海外工場に押され、日本の職人技を持つ国内アパレル工場が消えつつある。ファッションの世界において、なぜ工場の立場は弱かったのか。
岡田: その理由とは?
山田: 1つ目は、洋服の歴史というものが日本には150年しかないということ。服を作るという作業が分業制になっていて、工場はあくまでも外部からのオーダーに対して忠実に商品を作るだけになっています。
ちなみにイタリアの工場では、そこで働くオヤジがオシャレなんですよね。メディアに出てきては「俺の手縫いの何とかかんとか……」って感じで、こだわりとうんちくを語り出す。文化と歴史の違いですね。
2つ目は、商流の違いです。商社がデザインやブランディングを工場にやらせなかった。デザイナーを抱えている工場は少数派です。デザインは商社が外から持ってくるものなのです。
また、地理的な問題もあります。日本のファッション業界の中心地は、やっぱり東京なんです。ファッション誌のカリスマ編集長とか、スタイリストといった人たちがトレンドを作っているのは間違いありませんが、地方にある工場はその情報に触れる機会が少ない。
3つ目は、過去にメーカー直販が大失敗しているという事実。バブル経済のころ、表参道にはたくさんのメーカー直販ショップがありました。だけど、大借金を抱えて撤退します。この傷が大きすぎて、もう一度やろうという気持ちになれないのかもしれませんね。
岡田: なぜ「大失敗」だったのですか?
山田: 例えば、野菜の直販であれば、「おいしい」という絶対的な価値があれば、形は多少ゴロゴロしていたとしても受け入れられます。ファッションの世界では「カッコいい」「カワイイ」が絶対的なんです。
問題は、それが消費者それぞれでちょっとずつ違っていること。「デザインだ」という人もいれば、「クオリティだ」という人もいる。「ブランド」や「哲学」にこだわる人もいれば、「高価だから」という理由で選ぶ人もいます。
こういった部分をつかさどるのが「商」の部分なのですが、これが工場からすっぽり抜け落ちています。工場の人たちも「自分たちには『商』はできない」とあきらめてしまっている。だから、ファクトリエが、デザインやマーケティング、PR、販売といった部分を代行しているのです。
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