なぜアパレル業界で「工場直販」モデルがうまくいかないのか?:これからの働き方、新時代のリーダー(3/4 ページ)
低い人件費で大量生産が可能な海外工場に押され、日本の職人技を持つ国内アパレル工場が消えつつある。ファッションの世界において、なぜ工場の立場は弱かったのか。
ITを使った「業界の中抜き」は決して悪いことばかりではない
岡田: 実は……。工場の取り分が15%から50%になったのは素晴らしいと思いましたが、販売サイトのファクトリエが50%というのは「取り過ぎ?」とも思っていたんです。いまの説明を聞いて、製造以外のほぼすべての部分をファクトリエが担当していることが分かりました。折半というのは妥当かもしれませんね。
ところで、既存の流通構造に一石を投じるということは、既得権益を持っている人たちからニラまれるのでは、と思うのです。その場合、「弱者」である工場が被害を受ける可能性はないのですか? 「ファクトリエと付き合うなら、お前のところには発注しないぞ」と。
山田: そういう懸念がなかったわけではありません。だから、ファクトリエで扱っている商品は「ファクトリエ バイ 工場名」というブランドにしたんです。万が一、商社から圧力を受けても「ファクトリエに頼まれているだけなんです」と逃げられるように、と。
ところが、最近では状況が変わってきました。ファクトリエが組んでいる工場ならば、その品質が信用できるということで、それこそ、「強者」である小売のバイヤーが企画を持ち込んでいくのです。
例えば、ニット工場の「TERUTA」には、伊勢丹や大丸、阪急といった百貨店のバイヤーから声がかかりました。ネクタイ工場の「KUSKA」の商品も阪急やユナイテッドアローズでの取り扱いが始まりました。いままでの商習慣であれば、こういうケースはめったにありませんでした。
岡田: 既存の小売が直接、工場と取引を始める。これも「中抜き」ですよね。
山田: そうですね。「ITを使った中抜き」とニラまれるのではなく、業界全体で中抜きが良い方向に進みだしたなあ、と思っています。ファクトリエに工場の紹介依頼があれば、どんどん紹介しますよ。
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