なぜアパレル業界で「工場直販」モデルがうまくいかないのか?:これからの働き方、新時代のリーダー(4/4 ページ)
低い人件費で大量生産が可能な海外工場に押され、日本の職人技を持つ国内アパレル工場が消えつつある。ファッションの世界において、なぜ工場の立場は弱かったのか。
新しい「価値」を産まない中間業者は生き残れない
山田: でもね、既存の中間業者、商社にせよ、卸にせよ、振り屋にせよ、それぞれに存在価値があったわけです。むしろ、ITの力で効率化が進んだとしても、それぞれが新しい存在価値を発揮すれば、なくなる必要はないはずです。
岡田: ところで、どんな価値が新しく生まれてくると思いますか?
山田: 例えば、アパレルメーカーはデザイン力をもっと磨いてみる。商社は、お金を持っていますからファイナンスを強化したらいいと思います。小さな工場は、使ってみたい生地があっても、生地屋からの信用がなくてそもそも買えないこともある。だから、商社が代わりに生地を買い上げたらいい。
振り屋も、「昔からのなじみだから」という感覚で、惰性で仕事を振っていくのではなく、商品が求めている品質を実現できる工場はどこか、あるいはこの職人の技術が生かせる商品はないかというマッチング力を上げていけばいい。
例えば、「刺繍のスペシャリストのおばちゃんがいる」という情報があれば、ショップはクリスマスシーズンだけ刺繍のイニシャルを入れるオプションサービスが展開できるかもしれません。専門家にかかれば一瞬で終わる作業です。それを1回100円で提供すれば、お客さんも喜ぶし、お針子さんも喜ぶわけです。
ファクトリエは、そういう改善をアパレル業界にもっとたくさん起こそうと思っています。
岡田: ところで、山田さんはもともと起業家になりたかったのでしょうか?
山田: いや、婦人服屋の息子だったので、いつかは親の店を継ぐんだろうなと思ってましたね。ただ、今、起業することのハードルは低くなっていると思いますよ。「ファクトリエをやろう」と思ったとき、資金が50万円しかなかったんですから。(後編に続く)
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