年俸6億5000万円は、本当に「高い」のか? ベテラン「イチロー」の価値:臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(4/4 ページ)
天才バッターが岐路に立たされている。新戦力下のヤンキースでは「開幕スタメン落ち」で「外野手の5番手」という扱い。ただ、一方では「他のどんな選手にも勝る」と高い評価を受けている。この“ベテランの価値”をビジネスの現場になぞらえながら再認識しよう。
どんな状況にも順応できる──これがイチローの価値
「レギュラーだけではチームは勝てない。本当に強いチームには名脇役(バイプレーヤー)が必要なんだ。今年のヤンキースの外野手でイチローは5番手と言われているけれど、そんなことなど彼は気にしていないだろう。レギュラーであることだけを求めているのならば、彼はとっくにヤンキースを去っている。おそらくイチローはマリナーズでは味わえなかった常勝チームにいる喜び、そしてフォア・ザ・チームの精神を今強く感じ取っているんだと思う。彼はチームが勝つために毎日きちんと試合に出る準備を整えることができるプレーヤー。それがスターティングメンバーであろうが、途中出場であろうが、レフト、センター、あるいはライトであろうが、どんな状況でもアジャスト(順応)できる。それがイチローなんだ」
これは、かつてヤンキースで一時代を築いたバーニー・ウィリアムス氏の弁。ESPNでキャッシュマンGMがイチローの年俸に関する発言をしたのは前記したが、これについても同氏は「私がGMならばイチローの年俸は最低1000万ドル(約10億円)を用意するよ。彼にはそれぐらいの“投資”の価値がある」と独自の見解を述べていた。
イチローに年俸650万ドルの価値が本当にあるのか――。ちなみに2013年シーズンの成績は150試合の出場で打率2割6分2厘、35打点、7本塁打。出塁率も2割9分7厘で、メジャー13年目にして初めて3割を切った。ここまでのイチローの成績を見てきたファンからすれば物足りない数字かもしれない。
ただ、ベテランとしての数々の価値を考慮すると、私個人の意見から言えば、だからと言って650万ドルの価値がないとは思わない。キャッシュマンGMや、ウィリアムス氏と同じく今季のイチローの活躍に650万ドル、いや1000万ドルを“投資”してみたい気持ちである。
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集中力を支えるためには、脳と身体、どちらも常にベストコンディションにしておく必要があります。MLBのシーズン最多安打記録や10年連続200安打などの多数の記録を保持しているイチロー選手も、それを実践しています。 - 自分の持ち味を磨くことに徹する――完璧になる必要はない
イチローは、20年以上、ヒットを打つことだけに専念し、ホームランなどの余計な欲を持たなかったから、あれだけの大記録を達成できたのだ。自分の素質はどこにあり、何が優れているのか。何を捨て、何に徹するか。それを見きわめることが重要なのだ。
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