子作りキャンペーンから精子の輸入まで――世界の少子化対策いろいろ:伊吹太歩の時事日想(2/3 ページ)
日本では少子高齢化による人口減少が大きな問題となっているが、少子化に悩む国は日本だけではない。海外では、政府ではなく企業が少子化対策に乗り出すユニークな例もあるので紹介しよう。
メントスも動画で少子化対策を訴える
2012年にはシンガポールでも、若者にセックスをさせようとする動画が公開されて話題になった。シンガポールでも少子化問題は深刻で、お見合いパーティや出産減税、産休補助など、政府はさまざまな試みを行っている。
シンガポールでは8月9日のナショナル・デー(建国記念日)に、国をあげてイベントや花火の打ち上げなどが行われ、お祭り騒ぎになる。キャンディメーカーのメントスがその日に向けて制作した“子作り推進”ビデオ「Mentos National Night」(参考リンク)は、かなりコンサバなシンガポール社会にとって、意外なほどストレートなメッセージだったために、シンガポール社会を知る人たちの間では衝撃をもって受け止められた。
ビデオでは、ラップでメッセージが説明されていく。「8月9日は『ナショナル・ナイト』だから、オレたちの国家的な義務を果たさないと。スピーチや花火、パレードのことを言ってるんじゃない。こうしたイベントの“後に”やることを言ってるんだ。赤ん坊をつくる話をしてるんだよ」と始まる。そして「愛国心のある妻になろう、アハン」と女性にも訴える。
人口減少で国家のアイデンティティ消滅の危機?
世界には出生率をあげなければ、国家のアイデンティティが消滅するという国もある。その最たる例がイスラエルだ。イスラエルでは今、精子の輸入が話題になっている。
イスラエルの場合は、事情が他と比べて独特だ。イスラエルと言えば、中東和平問題の中心地である。2013年12月にワシントンDCで開催されたフォーラムで、米国のジョン・ケリー国務長官はこんなことを述べた(参考リンク)。
「イスラエルには現実的な脅威がある……イスラエルが(イスラエルとパレスチナの)2国家共存でイスラエルとパレスチナの紛争を解決しなければ、人口統計的な動きのために、民主的なユダヤ教国家としての未来を守れない」
イスラエルはパレスチナとの紛争を抱え、解決策である2国家共存というのはそれぞれが隣国として平和的に共存していくことを指す。そうすれば、もうお互いの領土を取り合うことはないし、武力衝突もなくなる。しかし、境界線をどこにするかが合意に至らず、今でもこの問題は解決する兆しがない。
ユダヤ国家であるイスラエル国内には、ユダヤ系とアラブ系の住民が暮らしている。現在アラブ系住民はイスラエルの人口の2割ほどだが、アラブ系住民の出生率が高いために、将来的にはユダヤ系住民の数を超える可能性があるのだという。もしそうなれば、一体何が起きるのか。
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