子作りキャンペーンから精子の輸入まで――世界の少子化対策いろいろ:伊吹太歩の時事日想(3/3 ページ)
日本では少子高齢化による人口減少が大きな問題となっているが、少子化に悩む国は日本だけではない。海外では、政府ではなく企業が少子化対策に乗り出すユニークな例もあるので紹介しよう。
ユダヤ教国家を存続させるために、精子を輸入
アラブ系住民がユダヤ系住民より多い状態で、民主的に選挙が行われれば、イスラエルはユダヤ系以外の民族によって統治されることになりかねない。イスラエルはユダヤ国家というアイデンティティを失うことになる。
これはイスラエルとパレスチナが1つの国になる場合でも同じだ。イスラエルとパレスチナを1国と考えると、2035年までにユダヤ人の人口は46%、つまり過半数を割ると予測されている。ケリー国務長官は、それについて言及しているのだ。
イスラエルは、精子バンクも活用しながら出生率をあげようとしているが、最近は提供者が劇的に減少し、国内では15の精子バンクが閉鎖の危機にある。宗教団体などが、匿名による精子の提供をやめさせようとしていることが原因だ。匿名性を求めることが多い提供者の足が遠のいているという。
そんな背景からイスラエルでは精子の輸入が増えている。最近では、世界的に精子バンクの供給が減少しており、輸入に頼らざるを得ない国は多い。ちなみに世界で見ると、デンマークは輸出先進国である。世界最大規模の精子バンク「クリオス(参考リンク)」は、デンマークから世界70カ国以上に精子を輸出している。
インターネットをうまく使えば、少子化は止められる?
一方で少子化の心配がない先進国もある。米国だ。米国には移民が多いために、人口減少の心配はない。さらに移民の女性は、子どもを妊娠する比率が一般の米国人よりも高い。
そんな米国では逆に、10代の女子たちの妊娠や出産が社会問題になっている。最近、この問題に対する面白いデータが紹介された。10代で子どもを産んだ女性の大変な生活を描写したリアリティ番組がMTVで放映され、人気を博しているのだが、興味深いことにこの番組の放送直後には「避妊」というツイートが23%も増加するという。
このデータを見て感じたのは、これを逆手にとればどうかということ。子供を作る、育てることが、いかにイケてることかを広めれば、子供を作りたい人たちが増える可能性があるということではなかろうか。
啓蒙(けいもう)ビデオだけではなくインターネットなどを使って、社会問題についてアプローチするのは効果的だ。日本でもどんどん展開すれば、少子化を食い止めるきっかけを作れるかもしれない。一考の価値はありそうだ。
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