ITを使った鮮魚流通の革新は「おいしい魚食文化」を取り戻すために――八面六臂:これからの働き方、新時代のリーダー(1/3 ページ)
鮮魚を扱う飲食店に発注アプリ入りのiPadを貸与して、漁師や産地市場とをダイレクトにつなぐ流通ベンチャー、八面六臂。松田社長が狙うのは中抜きによる価格破壊ではない。
「これからの働き方、新時代のリーダー」
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飲食店にとって、食材の仕入れ作業は必須のものだ。鮮魚流通の場合、ほとんどの卸業者が注文を電話かFAXで受け付けている。その結果、飲食店は「旬の食材」に気付けず、「いつもと同じ定番商品だけ」の発注を繰り返すこととなる。
鮮魚流通業界は、時代や環境の変化に対して適応できずにいる。消費者に新鮮で豊富な鮮魚が行き届かない「鮮魚流通過疎地域」も生まれている。ITを使って鮮魚流通に革新を起こしつつあるベンチャー、八面六臂の松田雅也社長に聞いた(聞き手はBusiness Media誠編集部の岡田大助、以下敬称略)。
⇒前編:「鮮魚流通業界のAmazonを目指す、八面六臂の挑戦」
殿さま商売気質が生み出している「鮮魚流通過疎地域」
岡田: 漁師、産地市場、築地などの卸売市場、そして仲買人といったルートを経由して消費者に届く鮮魚流通の仕組みは、いまだに昔ながらのやり方のまま。それゆえに「鮮魚流通過疎地域」が生まれてしまう。具体的には、どういったエリアを指すのですか?
松田: 東京都であれば、中野区より西側が「鮮魚流通過疎地域」になります。他にも埼玉もそうですね。なぜかといえば、卸業者が「遠いから配達できない」とすぐに断ってしまうのです。また、注文したものと違う魚が届いたり、魚が届いてから価格が分かったりすることもあります。
岡田: 中間業者の殿さま商売気質が抜けてない、ということでしょうか。箱根のような温泉地で出てくる鮮魚料理もあまりおいしいとは感じませんが、何か理由がありますか?
松田: それも流通の問題ですよ。目の前に小田原漁港がありますが、水揚げされた魚のほとんどは築地に送られてしまう。地元用にわざわざ1本、2本と抜いておくよりも「全部、築地行き」にする方が楽ですから。結果、魚は夕方になって築地から地元に戻ってくる。それでは味も落ちますよね。
もちろん、「全部、築地」に良い面もあります。すべての魚が目の前の漁港で揚がるわけではありませんからね。例えば、函館は海産物で有名な街ですが、カツオは揚がりません。ひとまず築地に集めることで、全国の末端流通の簡略化が実現できます。
そういう意味では全国が「鮮魚流通過疎地域」ともいえなくないのですが、八面六臂としては営業しやすいエリアを絞って取引先を増やしています。2013年の300店舗という目標は達成できました。2014年は1000店舗を目指します。
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