「マイルドヤンキー」論がもてはやされる理由:窪田順生の時事日想(2/3 ページ)
「マイルドヤンキー」という言葉がもてはやされている。「上京志向がなく、地元で強固な人間関係と生活基盤を構築し、地元から出たがらない若者たち」という意味だが、なぜここまでブレイクしたのか。それは……。
「犯人探し」が始まる!?
「言霊」ではないが、言葉というのは誰か口にしてふれまわることで、「力」を持ち始める。無論、それは良い方向のこともあれば悪い方向もあるわけだが、「マイルドヤンキー」は後者になってしまう恐れがあるのだ。
例えば、「マイルドヤンキー」の「上昇志向がない」というような説明なんかがかなり危うい。
これは要するに、“上京志向”がないということなのだが、あたかも都会に出ないで地元に居続けるということを“下”に見ているともとれてしまう。
こういうレッテル貼りがさらに進行すれば、「ネトウヨ」や「ブサヨク」なんてレッテルを貼られた人々が批判・攻撃されているように、ふとしたきっかけでスケープゴートにされてしまうかもしれない。
そんなの考え過ぎでしょと思うかもしれないが、イヤーな流れもある。
消費税増税に加え、アベノミクスも息切れをしている感が否めない。成長戦略だ、規制改革だなんだと声高に叫んではいるものの、一番の障害である官僚の数を減らすこともできていない。要するに、今のままでは景気は悪くなるということだ。
そうなれば間違いなく「犯人探し」が始まる。
こいつらがいるから日本はダメだとか、こういう連中が足を引っ張っているからだとか。そういう時、「マイルドヤンキー」なんて俎上(そじょう)にあげやすい。日本の競争力がイマイチぱっとしないのは、上昇志向もなく、グローバルのグの字も知らないドメスティックな“階層”が多いからだ、なんてことを賢そうな人がふれまわったら、それなりに説得力もある。
日韓関係を悪化させている原因として叩かれている「ネトウヨ」とイメージの重なる部分もあるので、「消費の主役」どころか「批判の対象」にされてしまう恐れもある。
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