職業「プラントハンター」――なぜこの男は命を懸けて花を採り続けるのか :仕事をしたら“珍しい花”を見つけた(前編)(4/5 ページ)
「プラントハンター」という仕事をご存じだろうか。彼らは珍しい花を求めて、ジャングルの中を駈けずり回ったり、断崖絶壁にへばりついたりしている。なぜ命を懸けてまで花を採り続けるのか。プラントハンターの西畠清順氏に、話を聞いた。
清順: もちろん。花が生える土地には、必ず所有者がいます。海外で土地の所有者を見つけ出して交渉するのは、ものすごく難しいんですよ。ときには国が所有する花もありますしね。なので、プラントハンターの仕事は1人ではできません。海外の業者と協力しながら、ハンティングを進めていかなければいけません。
土肥: 今はいろいろ規制が厳しそうですが、プラントハンターの職業ができた200〜300年前は、勝手に持ち帰っていたのでは?
清順: “泥棒”のようなもんですよ(笑)。オレも修行時代には“泥棒”をして、逮捕されました(涙)。
土肥: なんと!
清順: なんとか結果を残したいという気持ちが強くて、富士山で「カラマツ」を採ろうとしました。富士山で育つカラマツは、厳しい環境に耐えるために、太く短くうねっていて、まるで盆栽のような味わいになる。それを狙って、仲間の職人と富士山に向かいました。
冬の閉山した富士山は、とにかく厳しい環境でした。なんとか目的のカラマツを手にしたものの、「あっ、雲が近づいてきた」と思った瞬間に、視界が真っ白くなったんですよ。そして、遭難。足は凍傷にかかり感覚はなくなったのですが、なんとか道に出ることに。クルマに枝を積み込み、富士山の裾野まで下りたところで、パトカーに見つかってご用となりました。
土肥: それはイカンですねえ。
清順: イカンのですよ。どれだけほしい花があっても、それを手に入れるためには守らなければいけないルールがあります。修行時代にこういう大失敗をしておいて、よかったなあと思っています。もし、逮捕されていなければ、花への愛が暴走して、その後もっと大きな失敗をしていたかもしれませんからね。
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