世界でも日本でも拡大するクラウドファンディング市場:入門クラウドファンディング(2/4 ページ)
クラウドファンディングの概念はたいへん広く、なかなか正確な市場規模を把握することが難しい面があります。しかし、11年ごろを境に、日本をはじめ韓国、香港、シンガポールなど、アジア諸国でもクラウドファンディング・プラットフォームが続々と登場しています。
ベンチャーから大手まで、参入が続く日本
日本でも、高い技術とオリジナリティのある独立系事業の資金を一般の人たちから集める少額投資プラットフォーム「セキュリテ」(09年開始/ミュージックセキュリティーズ株式会社(※2)や、英国で始まった寄付型のプラットフォーム「ジャスト・ギビング(Just Giving)」の日本版である「ジャスト・ギビング・ジャパン(Just Giving Japan)」(10年開始/一般財団法人ジャスト・ギビング・ジャパン)などのプラットフォームが登場し始めました。
購入型プラットフォームの誕生
日本で「クラウドファンディング」という言葉が本格的に知られ始めたのは、投資でもなく寄付でもない、購入型クラウドファンディング・プラットフォームが誕生した11年でしょう。
同年3月に開始した「レディーフォー(READY FOR)」(オーマ株式会社)は、日本初の購入型クラウドファンディング・プラットフォームです。さらに、同年6月「キャンプファイヤー(CAMPFIRE)」(株式会社ハイパーインターネッツ)、7月「モーション・ギャラリー(Motion Gallery)」(株式会社Motion Gallery)と、続々と購入型のプラットフォームがサービスを開始します。
その後も、女性による発案のプロジェクトに特化した「グリーン・ガール(GREEN GIRL)」(11年開始/株式会社ワンモア)や、各都道府県にプラットフォームを運営している「ファーボ(FAAVO)」(12年開始/株式会社サーチフィールド)、大手IT企業のサイバーエージェント・グループが運営する「マクアケ(Makuake)」(13年開始/株式会社サイバーエージェント・クラウドファンディング)、「ジャスト・ギビング・ジャパン」を運営していたメンバーによる「シューティング・スター(ShootingStar)」(13年開始/株式会社JG マーケティング)など、13年12月現在までに著者もすべてを把握できていないほど多くのプラットフォームが生まれています。
被災地支援プロジェクトが端緒に
日本でのクラウドファンディング普及の特徴としては、「レディーフォー」「キャンプファイヤー」を始めとする初期のプラットフォームが11年3月11日に起こった東日本大震災の直後に開始していることもあり、まずは被災地支援のプロジェクトが多く立ち上がったことが挙げられます。
例えば、12年3月には、被災した陸前高田市の仮設住宅に新しく作られた図書室の蔵書購入のためのクラウドファンディング・キャンペーン「陸前高田市の空っぽの図書室を本でいっぱいにしようプロジェクト」が実施され、862人から824万5000円が集まっています。メディアにも、11年から12年初頭までは、被災地復興の1つのツールとしてクラウドファンディングが取り上げられていました。
このような経緯を経つつ、12年半ばからはクリエイターやアーティスト、そしてメーカーや工場などが利用するものとしても認知が広まっていきます。
先に取り上げた「ラピロ・プロジェクト」もそうですし、19世紀に誕生した“伝説のレンズ”と言われる「ペッツバール(Petzval)」を、今販売されているアナログとデジタルカメラ用のレンズとして復活させるロモグラフィ・ジャパンのプロジェクトは269人から1061万1600円を、ニューヨーク在住の日本人映画監督・佐々木芽生氏による新作ドキュメンタリー『ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの』の日本公開資金調達のキャンペーンは915人から1463万3703円を集めました。
さらに大手企業も、さまざまな形でクラウドファンディングの活用を始めています。3件の事例を紹介しましょう。
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