世界でも日本でも拡大するクラウドファンディング市場:入門クラウドファンディング(3/4 ページ)
クラウドファンディングの概念はたいへん広く、なかなか正確な市場規模を把握することが難しい面があります。しかし、11年ごろを境に、日本をはじめ韓国、香港、シンガポールなど、アジア諸国でもクラウドファンディング・プラットフォームが続々と登場しています。
開発とマーケティングの一体化を企図するゲーム会社
『ドラゴンクエスト』や『ファイナル・ファンタジー』など数々の大ヒットゲームを発売している日本を代表するゲーム会社、株式会社スクウェア・エニックスは、13年5月13日に開催された同社の持株会社スクウェア・エニックス・ホールディングスの決算報告会にて、松田洋祐社長が今後の事業戦略の見直しのポイントの1つとしてクラウドファンディングの活用の可能性に触れています。
同社の公式資料によると、ゲーム事業を改革するポイントの1点目として「長期大規模開発の見直し」を挙げ、クラウドファンディングは「単なる開発者に対するファイナンスの仕組みではなく、開発中、発売前からお客様と関わりながらゲーム開発をするという開発、マーケティング一体になった仕組み」であり、収益を出さぬまま長期にわたってゲームを開発するリスクを改善する一策だと述べているのです(※3)。
この約5カ月後にスクウェア・エニックスは、米国のクラウドファンディング・プラットフォーム「インディゴーゴー」と提携した世界向けの新しいプラットフォーム「スクウェア・エニックス・コレクティブ(Square Enix Collective)」を設立しています(※4)。
※4=インディーズのゲーム製作者に対し、企画から資金調達、開発から配信までをサポートとするプラットフォーム。ゲーム開発希望者はこのプラットフォームを通じてアイデアを投稿、それに対しゲーム・ユーザーが評価する。人気があるアイデアであれば、スクウェア・エニックスが企画内容を検討、商品化へのアドバイスを経て、インディゴーゴーでのクラウドファンディングを開始する。資金調達成功後は、開発、配信まで随時スクウェア・エニックスのサポートが入る
出版企画の実現に特化したプラットフォーム
また13年12月には、日本最大の印刷会社である大日本印刷株式会社は、クラウドファンディングのコンサルティングやプラットフォーム運営、ASP販売を手がける株式会社ワンモアと提携し、出版物の企画実現に特化したクラウドファンディング・プラットフォーム「ミライブックスファンド」をスタートすると公表しています(※5)。
これは、出版物の企画段階からアイデアを一般公開、企画に賛同し、書籍化を希望する人たちから資金調達して出版を実現しようというプラットフォームです。出版取次会社から一般書店への流通サポートも受けられるので、自費出版とも少し違う形態と言っていいでしょう。
特殊な印刷を要する豪華本や一部でコアな人気を集めつつある新人作家の作品など、大きな部数は見込めないもののニッチなニーズをもつ出版をサポートすることを目的としています。紙媒体、電子媒体を含め多様な出版物を手がけることができる大日本印刷と、クラウドファンディング関連のソリューションを提供するワンモアが提携することで、企画実現に必要な資金の調達、出版流通のコンサルテーション、制作・製造などに至るプロセスを提供することができると言います。
両社はこのプラットフォームを通じて15年度までに100件の出版を予定しているそうです。
CSR活動を推進する企業への支援
クラウドファンディングとの少し変わった関わり方をしているのは、アサヒグループホールディングス株式会社です。
同社はレディーフォー社と提携し『アサヒマッチングギフト・サービス』(※6)というプロジェクトを開始しています。
これは、レディーフォーのプラットフォームに掲載されている資金調達キャンペーンのうち、プロジェクト内容がアサヒのCSR(企業の社会的責任)活動の方針に沿うものを同社の支援キャンペーンとして選定、それらのキャンペーンに対し、クラウドファンディングを通じて調達した額と同額(上限額あり)の支援をするという試みです。つまり、企業のCSR活動の1つとしてクラウドファンディングで資金調達しようとする人たちへの支援をしているのです。
同社は第1弾として、社会全体で子育てをするための環境整備プロジェクト「期間限定asobi基地カフェ」実施のキャンペーンを上限50万円で支援、13年10月からは第2弾として、新しい防災・減災研修開発のプロジェクトに上限120万円のマッチング・ギフトを提供しています。
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