就活時は“ギラギラ”した印象……で、実態は?:上阪徹が探る、リクルートのリアル(3/4 ページ)
幅広い領域で次々とビジネスを拡大しているリクルート。今や売り上げは1兆円以上に。今のリクルートは、いったいどうなっているのか。第一線で活躍するエースたちから、今のリクルートのリアルを探る。
営業マンとしての存在価値
世の中に対して何かをアプローチする。何よりそのスタンスに松尾氏は共感を得た。ただ、営業は行動力のある同期たちのように怖じけずガンガンとはいかない。
「でも、だんだん変わっていったんです。店長に顔を知っていただいて、少しずつお話をしていただけるようになると、お店の課題を教えていただけるようになって。ああ、これが営業マンとしての存在価値なんだ、と。半年間はあっという間。もっと営業してもいいかな、と思いました」
気づいたことが多々あった。『Hot Pepper』には当時、広告掲載価格に大きな差を付けられた競合がいた。その価格は10分の1ほどだった。営業では、「『Hot Pepper』広告掲載は高いし、必要がない」という声をよく投げかけられた。しかし、やがて気づいた。広告費を出してもらう価格が高い分だけ、自分たちはクライアントの大きな期待に応えなければいけないんだ、ということに。安いお代なら、それなりの期待しかない。しかし、高いお代をいただくからこそ、高いパフォーマンスで応える必要が出てくる。それだけがんばれるのだ。それが分かってからは、まったくしんどさを感じなくなったという。
「ある先輩は、超人気のスペイン料理店を担当していました。そのお店は競合も含め、広告媒体にはまったく関心がない。来客はいくらでもあるから。そんなお店に、こんな風に語っていました。『スペインは昼間からお酒を飲む習慣があるそうですね。そんな文化を日本で一緒に作っていきましょう』と。こうなると、お客さまもググっと来るわけです。すごいと思いました。お客さまが実現したい世界を一緒に夢見る。それが営業の仕事なんだ、と」
エンジニアやネット人材の中には、営業に関心がない人も多い。だが、クライアントやカスタマーの気持ちや期待を肌感覚で知ることができたのは、本当に貴重な経験だったと語る。実際、これが後に『受験サプリ』で大きく花開く。
「私は自分に自信がないんですよ。それこそ、ひらめきや発想に長けている方はすごいと思う。でも、クライアントやカスタマーの代弁者としてなら自信を持って発言できます」
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