米国では、女性の5人に1人がレイプに遭っているという事実:伊吹太歩の時事日想(2/3 ページ)
最近、米国では大学内でレイプ事件がまん延し、政府が対策を迫られるほどの社会問題に発展していることをご存じだろうか。もはや、世界中のどこにいても、レイプの危険性を頭の片隅に置いておくべきなのかもしれない。
米国女性の5人に1人がレイプに遭っている
2014年1月、米政府は米国のレイプ問題について報告書を公表した(参考リンク)。報告書の内容はかなり衝撃的で、米国が驚くほど深刻な状況にあるのが分かる。なんと、米国人女性のうち、5人に1人(約2200万人)近くが生涯で1回以上レイプされた経験があるのだという。
しかも、そのうちの半数近くが18歳までに、そして20%ほどが大学在学中にレイプの被害者となっている。その半面、加害者の逮捕に至るケースは12%ほどだ。日本での強姦罪の検挙件数は1240件(2012年度、警察庁調べ)ということを考えると、規模が違うことが分かる(もちろん、検挙されないケースもあるので一概に比較はできないが)。
もちろん男性がレイプ被害者になるケースもある。その数は71人に1人という割合だ。そのうちの4分の1が10歳まで――まだ幼い子供時代に性的暴行を受けているという。
2200万人という数字はあまりにも多いと感じるかもしれない。ここでいう米国の「レイプ」の定義は日本とはやや異なる。というのも、米法務省は2012年にレイプの定義を“現代化”し、それまでの基準であった「強制的な挿入」がなくとも、同意できない状態での性交(飲酒や薬物が原因)やオーラルセックスを含むさまざまな性的行為、さらに被害者が男性の場合もレイプに含めるようになった。
レイプという犯罪は経済的にもマイナスの影響を与える。被害に伴う生産性の低下、捜査などのコストなどが主なもので、事件1件につき、9万ドルからひどい場合は20万ドルを超えると試算されている。
そんな状況の米国にあって、ここ3年ほどで、被害生徒たちが次々と米教育省などに告訴する流れが出てきた。女学生などの組織を中心に、レイプ事件そのものに加え、大学による加害者への処分の軽さを告発している。
イエール大学も、2011年に教育省への告発を受けた。当時、教育省はイエールを「性犯罪のある環境」と批判した。にもかかわらず懲りなかったのか、同大学は2013年、4件のレイプ事件を報告しなかったために16万5000ドル(日本円換算で約1665万円、2014年5月現在)の罰金を課されている。以降、同大学は性犯罪のイメージを消すためにかなり神経質になっていたが、再び大きく取り上げられる事件が起きたことで、話題になっているのだ。
レイプ防止へ米政府が動き出す
こうした状況に対応すべく、米政府は2014年4月末に大々的な施策を発表した。冒頭の動画を公表してWebサイトを開設し、ガイドライン(参考リンク)も発表した。さらに、これに合わせて米教育省が危ない大学リストの公表に踏み切ったのだ。
危ない大学とはつまり、連邦政府が現在捜査を行っている大学55校のこと。その中には、世界的に知られる超名門大学も含まれる。例えばアイビーリーグからはハーバード大学、プリンストン大学、ダートマス大学の3校。このほかにも、南カリフォルニア大学、カリフォルニア大学バークレー校、シカゴ大学、カーネギーメロン大学、ボストン大学、コロラド大学、アリゾナ州立大学などがリストアップされている。
専門家らのコメントを見ると、表に出るレイプ事件の発生件数は“実態よりもかなり少ない”という指摘が多い。今回の施策で評価すべきは、こうした問題が存在していることを政府として公式に認めたことにある。啓もう活動として、事件を抑止する可能性がある。
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