アラフォーの「pino(ピノ)」が、いまも現役でがんばっている理由:仕事をしたら“アイス”ができた(1)(5/6 ページ)
アイスが食べたくなったので、コンビニの冷蔵ケースの中をのぞいてみると、定番商品ばかり。アイス市場は新商品が生まれにくいものなのか。そんな疑問が浮かんできたので、ロングセラーを続けている「pino」(森永乳業)の担当者に話を聞いた。
アイスのブランド価値
土肥: アイスのブランド価値ってなんでしょうか?
木下: またまた難しい質問ですね(苦笑)。クルマや家電を買う前には、いろいろ調べますよね。スペックはどうか? 競合商品はどうか? 価格はどうか? といった感じで。ただ、アイスは100円、200円の世界なので、パッケージを見て「この商品を買おう」と衝動的に買う傾向がありますよね。なので、ブランド価値を高めて、それによって購入に結びつけることが難しい。
例えば、「ピノはこんなに幸せになれるブランドですよ。だからみなさん幸せになってくださいね」とひたすら伝え続けても、たぶんお客さんとの距離感は縮まらないでしょう。
土肥: ウソくさい、ウソくさい。距離感は縮まるどころか、離れていっちゃう。
木下: なので、繰り返しになりますが、ピノでしか楽しむことができない「味」を作っていかなければいけません。またファンを増やすためにいろいろなことをしているんですよ。例えば、「朝ピノ(朝にピノを食べること)」を研究するための機関「朝ピノラボ」をつくったり、普段味わえないフレーバーを組み合わせて、自分だけの「ピノ」をつくって食べることができるイベントを開催したり。このほかにも、Webサイトで「ピノ占い」や「ピノゲーム」で楽しんでいただけるようにしました。
さらに2004年からフレーバー展開を始めました。当時はアイスに限らず、さまざまなカテゴリーから新商品が出ていました。お客さんのニーズが多様化していて、情報も氾濫していました。社内からも「多様化するニーズに応えていかなければいけないのでは」という声があってフレーバー展開に踏み切りました。そうすることで、「これまでピノを買ったことがない層を取り込めるかも」「ピノファンに、もう1個買っていただけるかも」「『定番のピノ+いろいろな種類』が並ぶことで、売り場が活性化するかも」――そんな思いがありました。
土肥: 年に5〜6種類のペースで、新商品を出されていますが、過去最大のヒットはどれですか?
木下: 初めて出した「いちご」ですね。アイスの人気フレーバーは、昔から「バニラ」「チョコ」「いちご」なんですよ。
土肥: 新フレーバーはどのようにして決められるのでしょうか?
木下: お客さんがどんな味を食べたいのか。どの時期にどの味を食べたいのか。といったことを調査すると、いろいろなことが見えてくるんですよ。例えば「私はバニラ党。バニラ以外は目もくれません」という人がいる。あるいは「バニラが一番好きだけど、新しいフレーバーが出たら食べたい」という人もいる。あるいは「私は抹茶党」という人もいる(数は少ないですが……)。
あまり世に出ていないフレーバーを出すと、どうしても好き・嫌いが分かれてしまう。そうなると、売り上げが落ちてしまうんですよね。なのでピノは、定番のフレーバーと少し目新しいフレーバーを織り交ぜながら展開しています。
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