部下を育てられない上司は評価されない――「全員リーダー」を実現するGEの人材育成法:企業家に聞く【安渕聖司氏】前編(2/4 ページ)
世界最大のコングロマリット、ゼネラル・エレクトリック。変化の激しい時代でも成長を続けるコツは、人材育成にあるという。一般的な外資系企業のイメージとは異なる、GE流の人材育成、それを実現する文化と仕組みに迫る。
リーダーを育てるための「しくみ」
――これだけの組織でモノカルチャーを維持しようとすれば、リーダーに求められる役割も重くなりそうですが……
安渕: GEには「全員がリーダーになる」という明確なミッションがあります。つまり、誰もがリーダーシップを学べば、身に付けられることを大前提としている。リーダーとはどういう人材なのかも明確に定義されています。それが5つの要素で構成される「グロースバリュー」です。
リーダーに必要とされるバリューは時代によって変化していますが(例えば、4E――Energy、Execution、Edge、Energizeはジャック・ウェルチの時代のバリューだった)、現在は5つの要素から構成されています。これは社内130人のリーダーについて、本人とその関係者(同僚や上司、顧客など)にインタビューして抽出したものです。
- 外部志向(External Focus)
- 明確で分かりやすい思考(Clear Thinker)
- 想像力と勇気(Imagination & Courage)
- 包容力(Inclusiveness)
- 専門性(Expertise)
こうした行動規範は、標語として壁に飾っておしまい……ということも珍しくありません。しかしGEでは、業績と組み合わせる形で、このグロースバリューも人事評価に組み込まれています。その比重は50%と大きく、いくら業績がよくても、グロースバリューを備えていなければリーダーとしては不適格、ということになる。
――リーダーとして成長するための研修プログラムでは、世界中からそういった評価を受けた適格者が集められるそうですね。
安渕: 世界中にあるGEグループ企業の、製造から経理までさまざまな部門のリーダーが米国のクロトンビル(Crotonville、GEの研修施設がある)に集まり、約10名のチームで3週間、与えられた課題について夜遅くまで議論を重ねます。そのチームメンバーは社内におけるネットワークになり、自身の視野を広げてくれるでしょう。その後のビジネスキャリアを歩む上でも、大きな支えになります。
この研修はトップのコミットメントが非常に大きいことも特徴です。現CEOのイメルト(ジェフリー・イメルト氏)はほとんどの研修に必ず顔を出し、参加者と直接会話を交わします。この規模の会社では非常に珍しいと思いますが、研修や社員のスキルとネットワーク構築に対して、トップも本気だと態度で示している。彼らマネジメント層は毎週必ずクロトンビルに足を運びます。業務の30%以上をこうしたトレーニングへに投じているのです。
関連記事
- 部下をうまく叱れない。そんな40代管理職は当然いらない
あなたは部下や後輩を、どんな風に叱っていますか? 胸に手を当てて考えてみてください。前回の30代に続き、今週は40代の話。「あなたがこんな40代だったら、あと10年会社にいることはできませんよ」がテーマです。 - 人の心をつかむ、「エレベータースピーチ」とは
わずか30秒で人生を変えるスピーチとはどんなものなのでしょうか? まずはエレベータースピーチとは何か、どういう構成なのか、どう作ればいいのかを学ぶことから始めましょう。 - 米国と日本、会議に対する意識の違いは――コンファレンスコーディネーター・田中慎吾氏(後編)
「会場は軽井沢のリゾートホテルで。ゴルフでもプールでも、自由時間は好きに過ごしていいですよ」――田中氏が手がける研修は参加者だけでなく、企業からも「また使いたい」と好評だという。コンファレンスビジネスとはどのような仕事なのか? その成り立ちや日本での展開を聞いていく。 - 外資系企業、非情な“クビ切り”の実態
「外資系企業=クビ切り」といったイメージがあるが、実態はどうなっているのだろうか? 全従業員の下位10%になればクビという米GEや、そのほか投資銀行や戦略コンサルティング業界のクビ切りの真相について、関係者から話を聞いた。 - 連載「マッキンゼー流仕事術」
- 連載「朝シフト仕事術」
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.