部下を育てられない上司は評価されない――「全員リーダー」を実現するGEの人材育成法:企業家に聞く【安渕聖司氏】前編(3/4 ページ)
世界最大のコングロマリット、ゼネラル・エレクトリック。変化の激しい時代でも成長を続けるコツは、人材育成にあるという。一般的な外資系企業のイメージとは異なる、GE流の人材育成、それを実現する文化と仕組みに迫る。
常に変化し続けることを前提に
――GEはなぜこのようなシステムを整備したのでしょうか?
安渕: 最初はGEも典型的な米国流企業で、中央集権的に物事を進めていたと聞いています。しかし、創業事業であった電機関連からビジネスが拡大し、各国、各部門のマネージャーに権限を持たせないと、素早く意志決定ができないことに気がついたのです。
そこで1956年に、企業内大学の走りとも言える研究所をクロトンビルに作り、マネージャー研修を始めました。グローバル化が進めば、一方で各々の組織はローカル化する。それを1つの会社として管理するための方法論を研究し、研修プログラムという形で、組織に根付かせる取り組みを長く続けてきました。現在は、その機能を強化したジャック・ウェルチの名前を取って「ジョン・F・ウェルチ・リーダーシップ開発研究所」という名称になっています。
――安渕さん自身も、研修を受けた経験がありますよね。マネジメント層の社員にもひんぱんに研修の機会を提供するのは珍しいと思いました。期間も3週間と、かなりのコストをかけている印象です。
安渕: 複数の事業部門を持つ会社でマネジメント層になる人は、どのビジネスでもマネージできなくてはいけないという考え方が根本にあります。マネジメントというのは1つのプロフェッションです。一般的な企業でも、本部長といった形でいろいろな事業のマネジメントを経験させて、その能力を高めていきますが、GEの場合はそういった社員に数年に一度研修の機会を与え、GEイズムの再教育を施すわけです。
――社員の成長を重視する一方で、ジャック・ウェルチと言えば「10%ルール」、パフォーマンスの低い下位10%の層をリストラする方針も有名です。
安渕: ウェルチは“変化し続ける”ことを大事にしていました。CEOがウェルチからイメルトになる時も、自分ができなかったことを含めて、会社をどんどん変えていける人材を選んだはずです。ウェルチが作ったものだからといって、絶対に変えてはいけないというわけではない。時代に合わせて、GEを取り巻く環境も変わっていく。だからバリューも変わるし、変えていくことが使命なのです。
その10%ルールですが、今はありません。当時は必要だったのだろうと思います。例えば、会社が大きくなりすぎていたり、収益性の低い事業をたくさん買ってしまったり――その中で事業を整理して、会社としてパフォーマンスを上げていくためには何をするべきかという時期だったのでしょう。
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