部下を育てられない上司は評価されない――「全員リーダー」を実現するGEの人材育成法:企業家に聞く【安渕聖司氏】前編(4/4 ページ)
世界最大のコングロマリット、ゼネラル・エレクトリック。変化の激しい時代でも成長を続けるコツは、人材育成にあるという。一般的な外資系企業のイメージとは異なる、GE流の人材育成、それを実現する文化と仕組みに迫る。
人事を重要視、全社員を客観的に評価する
――なるほど。そういった仕組みのアップデートは誰が行うのでしょうか?
安渕: マネジメント層と人事部門が一体となって行っています。GEは通常の会社と比べて人事を重要視していて、その権限も大きい。ヒューマンリソースを大切にしているのです。組織の作り方、適材の教育、抽出といったところから、CEOの後継者選びにも大きく関わっています。実際、私が日本事業のトップになるときも、私の「ライフヒストリー」を人事がヒアリングにやってきました。それも3時間(笑)。
――普通の人事だと、ちょっと聞かない話ですね。
安渕: 驚きましたね。どういう家庭で生まれ、どう育って――そんなところから教えてくれ、という話でしたから。給与とか休暇日数の管理とかだけではなく、個人のバックグラウンドを理解した上で、人事が経営者選びに関わるのはとてもユニークだし、素晴らしいシステムだと思います。
人事は経営者も含め、社員を客観的に評価する役目を負っている。たとえ自分を採用したCEOであっても、マネジメント面で改善点があれば進言する義務があります。
――評価者に報復してはダメ、というルールがきちんと定められていることも著書では紹介されていました。
安渕: 人間関係や上下関係で意見が変わる人がいますが、組織全体のことを考えれば、それはよくない。日本事業の代表である私のところでも、何か問題があれば、すぐにボスの知るところとなる。CEOには大きな権限がある一方で、きちんとチェックされるという緊張感もあるのです。
ちなみに、GEには社員同士が互いを評価する、いわゆる“360度評価”の仕組みはありますが、それは人事評価に影響しません。純粋に「あなたのここは素晴らしい、逆にここは改善した方がよい」というフィードバックに使われます。360度評価が給与に結びつくと、互いに問題点を指摘するモチベーションは失われるでしょう。
――確かに昔、評価の時期になると上司が急に親切になった記憶があります(笑)。GEのそういった仕組みは「人間がどういう生き物か」をよく吟味して設計されているなと。
安渕: そうですね。そして、会社のシステムそのものが、常にストレッチしてスキルを伸ばすことを前提としているところがGEの大きな特徴なのです。
(後編へ続く)
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