上司は隣の部署の社員も評価しなければいけない――なぜそんなことを?:上阪徹が探る、リクルートのリアル(1/5 ページ)
成果主義、実力主義を導入している企業は増えてきたが、売上高が1挑円を超えるリクルートではどのような人事制度を導入しているのだろうか。経営企画室長の今村健一氏に話を聞いた。
著者プロフィール:
上阪徹(うえさか・とおる)
1966年兵庫県生まれ。1989年早稲田大学商学部卒業後、リクルート・グループなどを経てフリーランスのライターとして独立し、雑誌や書籍などで執筆。経営、経済、金融、ベンチャー、就職などの最前線のビジネス現場から、トップランナーたちの仕事論を分かりやすく伝えるインタビュー、執筆を得意とする。取材相手は3000人を超える。
著書に『書いて生きていく プロ文章論』『リブセンス<生きる意味> 』『成功者3000人の言葉 人生をひらく99の基本』『職業、ブックライター』『僕がグーグルで成長できた理由』など。インタビュー集にベストセラーになった『プロ論。』など。
上阪徹が探る、リクルートのリアル:
→仕事ができる人の共通点は? リクルートで働いて学んだこと(2)
→月980円のオンライン予備校「受験サプリ」は、どのようして生まれたのか(4)
→創業は「紙」、今は「IT」――ビッグデータのカギを握る男に迫る(5)
→なぜ米国ではなく、ドイツに? ビッグデータを構築した男が選んだ道(6)
→本記事(7)
「リクルート」と聞いて、こんなイメージを持つ人は少なくないかもしれない。成果主義、実力主義が浸透している。年齢・性別に関係なく抜てきされる。年上の部下、年下の上司は珍しくない……。
実際、私がグループで仕事をしていた1990年代前半は、まさにこのイメージ通りだった印象がある。今でこそ多くの会社で実力主義や若手抜てきがずいぶん進んできた印象があるが、当時はまだまだ年功序列が当たり前。だからこそ、リクルートは大いに目立つことになった。また、こうしたカルチャーがリクルートの急成長に大きく寄与したことは間違いないと思う。
もちろん今も、リクルートのカルチャーは健在だ。だが、間違いなく言えることは、私がかつていたころよりも、はるかに進化している、ということである。人材の抜てきが、よりダイナミックになっているのだ。例えば、売上高1兆円超、グループ従業員約2万5000人以上というリクルートグループを統括しているリクルートホールディングスの執行役員は17人しかいないが、その中に37歳の人物がいる。入社15年目の社員だ。
そして今回、登場する人物もまた、全グループを統括するホールディングスの経営企画室のトップである室長に36歳で就任している。このスケールで事業を展開している日本企業で、ここまで大胆な抜てき人事が行われている企業は少ない。もちろん2人はほんの一例で、ホールディングスにせよ、分社化されたカンパニーにせよ、若手の大胆な抜てきは当たり前のものとなっている。ホールディングスの本部長クラス、グループ子会社の執行役員に相当するポジションへの新規任用者の平均年齢は38.5歳(2014年4月時点)。最年少は、31歳の女性だ。となれば、気になるのは、リクルートはどうしてこんなことが可能になっているのか、である。なぜ、入社10数年の役員や経営企画室長が出てくるのか。
新しい人事制度は2007年に策定されている。端的に言えば、「実力や期待値でポジションや報酬が決まる仕組み」だが、これを実現させるために、驚きの取り組みが行われているのだ。この制度づくりに携わったのが、リクルートホールディングス経営企画室長の今村健一氏である(取材は3月に行われたが、4月にもともと兼務していた人事室長専任となっている)。
この20年で急激に変わったリクルートを象徴するキーワード「グローバル」「新規事業」「テクノロジー」「戦略・人材活用」「M&A」を5つのテーマに、第一線で働く現役社員に聞くインタビュー。第7回「戦略・人材活用」(前編)はこの今村氏にご登場いただく。36歳にして、1兆円企業の経営企画室長を委ねられた人物。そのキャリアは小さな企業を訪問する営業からスタートしている。
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